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コラム 12時間前

フロリアン・ヴィルツがもたらしたリヴァプールのバランス。ブライトン相手に攻勢に立てた理由と新たな可能性【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

リヴァプールMFフロリアン・ヴィルツ
リヴァプールのフロリアン・ヴィルツ【写真:Getty Images】



 プレミアリーグ第16節、リヴァプール対ブライトンの試合が現地時間13日に行われ、ホームチームが2-0で勝利を飾った。この試合でキーマンとなったのが、今夏に加入したフロリアン・ヴィルツだ。ゴールとアシストという数字の部分では結果を残すことができてないが、チームの機能性という部分では多大な貢献度が見られている。(文:安洋一郎)[1/2ページ]
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リヴァプールがブライトンに2-0の完勝

 昇格組相手に連続して引き分けていたリヴァプールが、プレミアリーグで3試合ぶりとなる勝利を掴んだ。

 ブライトン戦の勝利の要因はいくつか考えられる。

 まずはアンフィールドのサポーターが作り出す空気感がプラスに働いたこと。開始46秒にFWウーゴ・エキティケが先制点を決めたことからスタジアム全体のボルテージが一気に高まった。

 28分に右SBで先発出場したDFジョー・ゴメスに代わってFWモハメド・サラーがピッチに入ると、サポーターたちは直近の言動で賑わせていた“渦中の人物“に対してもリスペクトの拍手で迎えた。

 こうしたファンの声援に後押しされるようにリヴァプールの選手たちは躍動。試合を通したデュエル勝率では66%を記録し、ブライトンの34%のおよそ倍の勝率を誇った。



 多くの局面で勝ち続けたことに加え、ブライトンの決定力不足にも助けられた。

 ファビアン・ヒュルツェラー監督のチームは、前節ウェストハム・ユナイテッド戦に続いて決定機でもシュートが枠に飛ばず、今節も14本のシュートに対して枠内シュートは1本に留まった。

 実際の試合内容は2-0のスコア以上にあったように感じる。

 1試合の結果だけで状況が好転すると判断することは難しいが、このゲームをキッカケに調子を取り戻すかもしれない。

 そのキーマンとなりそうなのが、今夏に1億1600万ポンド(約227億円)の移籍金で加入したフロリアン・ヴィルツである。

フロリアン・ヴィルツを活かした効果的な攻撃

 この試合に向けて大きなトピックスが2つあった。

 それが先週末に行われたリーズ・ユナイテッド戦で負傷したコーディ・ガクポの不在とミッドウィークのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)インテル戦でメンバー外となったサラーのスカッド復帰である。

 特に不動のレギュラーであるオランダ代表FWの離脱がチームに与えた影響は大きく、ブライトン戦ではヴィルツが左WGで起用された。

 結果としてはヴィルツのスタメン起用がポジティブに働いたと言える。



 ドイツ代表MFは初期配置の左サイドから中央や右サイドに流れることで、ストライカーのエキティケとポジションを入れ替えながらボールを引き出した。

 これによって2列目に流動性が生まれただけでなく、ポジションの入れ替えもあったことでバランスが保たれている。

 最終ラインからのビルドアップでは、この試合で最もボールを触ったカーティス・ジョーンズが最終ラインに下りる形で3バックを形成。

 左SBのミロシュ・ケルケズが、ボーンマス時代のような大外のアップダウンに専念できるような機能性が生まれ、停滞感の強い試合との比較ではピッチ上のバランスがかなり良かった。

フロリアン・ヴィルツの良さが活きたシーン

 その代表例が20分のシーンだ。

 左にいたヴィルツが右サイドに流れて相手選手の間でボールを受けると、そのまま縦にドリブル突破してからマイナスのエキティケに折り返した。

 フランス代表FWのシュートは惜しくも枠を外れたが、左WGのキャラクターがガクポからヴィルツに代わったからこそ生まれた決定機だった。

 この時に左の大外にはケルケズがボックス内まで入っており、しっかりとチームの構造として幅を使うことができている。



 この試合の各選手の平均ポジションを見ると、ヴィルツとジョーンズ、アレクシス・マック・アリスター、ライアン・フラーフェンベルフの4人が中央でコンパクトにまとまっていた。

 リヴァプールの中盤の選手たちは技術力が高いことから狭いスペースでボールを受けることを厭わない。その中でお互いに相手の中盤のギャップに入ってボールを引き出すことで、中央からの攻撃が効果的に機能していた。

 これはボールを失った後のネガティブトランジションにも好影響を与えており、前半は今季の課題である中盤の間延びを避けることができている。

 冒頭に紹介したブライトン比較でおよそ2倍のデュエル勝率の高さも、狭い距離感でプレーしたことが影響を与えているだろう。

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