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「ベスト32に進む方が…」イタリアはW杯の組み合わせをどう評価したのか。最大の敵はスイスでもカタールでもカナダでもない?【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

FIFAワールドカップ2026組み合わせ抽選
FIFAワールドカップ2026の組み合わせが決まった【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ(W杯)2026の組み合わせ抽選会が現地時間6日に行われた。イタリア代表はまだ本大会出場を決めていないが、仮に欧州プレーオフを突破した場合は、開催国カナダ、スイス、カタールと同じグループに入る。この組み合わせについて、現地はどう評価しているのだろうか。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
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W杯本大会の組み合わせには恵まれたイタリア代表

FIFAワールドカップ組み合わせ抽選会
FIFAワールドカップ2026組み合わせ抽選会がアメリカ合衆国で行われた【写真:Getty Images】

「イタリア代表がこの場所に来られる可能性があることを願っている。ここアメリカには多くの同胞が暮らし、その空気の中で息づき、イタリアがワールドカップで再び主役となる姿を待ち望んでいる。

 私は、イタリアを愛するこうした人々の期待を、選手たちが裏切らないことを願っている」

 現地時間5日にワシントンD.C.のジョン・F・ケネディ・センターで行われた2026年FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会の組み合わせ抽選会後、ロベルト・バッジョはこう語った。

 イタリアは開催国の一つであるカナダに加え、スイス、カタールと同組になった。しかし、その前に本大会への出場権を確保しなければならない。

 1994年W杯アメリカ大会でアッズーリを牽引し、惜しくも優勝を逃したバッジョの言葉は、イタリア国民の総意でもある。アッズーリは万難を排して出場権を勝ち取らなければならない。



 イタリアが過去のグループステージ(GS)で対戦してきた相手や、今大会のほかのGSの顔ぶれを見比べても、今回の抽選結果は“恵まれた”と言えるだろう。

 イタリアが最後にW杯に出場したのは2014年大会であり、そのときのグループは、コスタリカ、ウルグアイ、イングランド、そしてイタリアという、3つのW杯優勝国が同居した、まさに“死の組”だった。

 そして、この組を突破したのは、ウルグアイ(2位)と、最弱と予想されていたコスタリカ(1位)で、イタリアは唯一勝利を挙げた相手であるイングランドとともに葬り去られた。

 この大会と比べれば、2026年大会の組み合わせは“天国”のようである。

 イタリア・メディアは、この“幸運な”組み合わせをどのように報じたのだろうか。

「勝ち点3は確保できる見込みがある」

UEFAユーロ2024、ラウンド16のイタリア代表対スイス代表
イタリア代表はユーロでスイス代表に完敗している【写真:Getty Images】

 日刊紙『コッリエーレ・デッラ・セーラ』では、著名ジャーナリストのパオロ・コンドーが見解を述べている。

「過去の大会が常にそうだったように、開催国は“やさしいポット”に恵まれてきた。今回の開催国は、3か国。アメリカ、メキシコ、カナダもあるため、理想の行き先は当然、“力が削がれたグループ”のいずれかだった。

 そして、開催国の中でどこがイタリアにとって最適なシード国かを選ぶとすれば、カナダがベストだった。なぜなら、アルフォンソ・デイヴィス(バイエルン・ミュンヘン)やジョナサン・デイヴィッド(ユヴェントス)ら名前のある選手は多少いるが、数としてはさほど多くはないからだ。

 スイスといえば、前回のユーロ(欧州選手権)で我々イタリアを“ただ倒した”のではなく、我々を“辱めて倒した”相手だ。だが、カタールの存在があることで、もし最悪の展開になっても、ベスト3位(12チーム中8チームが通過)に滑り込むための勝ち点3は確保できる見込みがある」

 イタリアは、隣国スイスとこれまで62回対戦し、29勝23分け8敗と大きく凌駕している。しかし、近年はこの数字をそのまま当てにはできない。



 というのも、2022年W杯予選では2試合を戦っていずれも引き分けに終わり、さらに2024年大会のユーロ・ラウンド16では0-2で敗れた相手だからだ。

 また、コンドーは「スイスはW杯前の“スパーリングパートナー”だった」と語っており、長きにわたり“格下”という印象が定着していたが、近年はその様相が明確に変わった。

 直近のユーロでの一戦では手も足も出ず、「イタリア史上、ユーロでの最悪のパフォーマンス」と酷評されるほどであった。

 スイスは欧州予選の全6試合で14得点を挙げており、失点も2点にとどめてグループを突破。グラニト・ジャカ(サンダーランド)を中心に、ムラト・ヤキン監督は強固なチームを築き上げている。このグループの最大のライバルとなることは間違いない。

 それでも、スイス代表に詳しいジャーナリスト、ティム・ギユメンは、イタリアへの警戒を強める。

難敵はスイス。カタールは草刈り場に?

カナダ代表 デレク・コーネリアス
開催国のカナダ代表は侮れない相手だ【写真:Getty Images】

「これ以上に簡単な組み合わせは考えられない」としながらも、「プレーオフ勝者という不確定要素が残っており、そこにイタリアが入ってくる可能性もある。もしそうなれば、ここだけは運が良かったとは言えない」と身構え、イタリアへのリスペクトをしっかりと示した。

 カナダは1984年にテストマッチで1度だけ対戦した記録があるだけだ。敵地トロントで行われた一戦で、アッズーリが2-0で勝利を収めているが、40年以上前の試合でまったく参考にならないデータだ。

 そのカナダに関しては、楽観視されているが、最近のテストマッチの結果を見る限り、侮れない相手であることを強調しなければならない。

 今年9月には、ウェールズに敵地で1-0と勝利。イタリアがプレーオフ決勝で対戦する可能性がある相手から白星を収めている。昨年夏にはアメリカにも2-1で勝つなど、開催国の一つであって、強化にぬかりがない。

 カナダ代表のジェシー・マーシュ監督も語気を強める。



「このグループは勝ち抜けると信じている」とカナダ最大のスポーツ専門チャンネル『The Sports Network』のインタビューで語る。

「どの国が同じ組に入ろうと、そう言っただろう。なぜなら、このチームを信じているし、選手たちの強さと自信を信じているからだ。ホームで戦えるのは大きなアドバンテージだ。

 過信はしない。現実的に、集中して、日々機械のように高いパフォーマンスを続けていく。それがこれまで我々がやってきたことだ」

 初戦の相手はまだ確定していないが、彼らにとって相手がどこになろうと関係はないようだ。

 カタールとは過去に対戦した実績がない。2022年W杯開催国であったが、史上初めてGSで開催国として3戦全敗を喫してしまう不名誉な記録を残してしまった。

 AFCアジアカップでは2019年、2022年と連覇を成し遂げたものの、今大会予選は苦しみ、アジア・プレーオフを勝ち抜いての出場権獲得となった。今グループで最弱国であるという印象は否めない。

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