フットボールチャンネル

コラム 3週間前

「感情的に伝えたのはそのときが初めて」宮澤ひなたはマンチェスター・ユナイテッドでもがき悩み、居場所を見つけた【コラム前編】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Getty Images,Editor
マンチェスター・ユナイテッドWFC 宮澤ひなた

マンチェスター・ユナイテッドWFCの宮澤ひなた【写真:Getty Images】



 女子サッカーの世界最高峰リーグのひとつ、イングランドのウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)でマンチェスター・ユナイテッドWFCの一員としてプレーする宮澤ひなた。勝負の年と位置付けた3年目の今季は、前半戦を終え11試合すべてにフル出場し、チームに欠かせない存在となっている。「自分の居場所を見つけられた」と語る26歳の本音とはいかに。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]

【単独インタビュー/取材日:12月23日】 

宮澤ひなたがマンチェスター・ユナイテッドWFC加入3年目を振り返る

2023年に行われたFIFA女子ワールドカップ(W杯)で得点王に輝いた宮澤ひなた【写真:Getty Images】

 2025年12月21日、年内最後の公式戦となったFA女子リーグカップを勝利で終えた宮澤ひなたは充実感を滲ませつつ、過密日程を走り抜けた今の思いを語ってくれた。

「率直に試合に勝ったことはすごく選手として嬉しいです。正直、連戦もきつくて、中2日、3日で12月も代表が終わってから5試合あって、その中で国が変わったりした。連戦をやってみて、その中で勝ちに行かなきゃいけない難しさはすごく感じたことではあります。

 それと同時に常に良いコンディションでやらなきゃいけないことを改めて感じさせられました。毎週リーグ戦で1試合1試合戦っていくこともすごく大事ですけど、(UEFA女子)チャンピオンズリーグ(UWCL)に出たいという自分の夢があった中で第一歩として連戦の過密日程を戦っていかなきゃいけない難しさ、きつさはあった。けど、いろんな相手と対戦できる楽しさは感じながらできていたと思います」

 宮澤は今季、主にボランチやアンカーのポジションを担い、リーグ前半戦で11試合すべてにフル出場し、1ゴールを挙げている。

 宮澤と言えば、2023年に行われたFIFA女子ワールドカップ(W杯)の得点王に輝いたイメージを持っている方もいるかもしれない。

 スピードと巧みなテクニックを武器にアタッカーとしてサイドを駆け上がり、ゴールを果敢に狙う。



 だが、ユナイテッドに移籍してから、怪我やポジション変更などの影響もあり、出場機会は限られていた。

「本当にこの移籍は自分にとって正解だったのか、W杯で得点王を獲ることができて、ユナイテッドに移籍できた。ここから自分がどう世界に通用するのかというところでチャレンジしましたけど、1年目から簡単にはいかなくて、ラスト10分で自分のプレーをどう出したらいいか、すごくもどかしいことが続いていた」

 それでも、徐々にアンカーとして指揮官から信頼され、2025/26シーズンのUWCL出場権獲得の原動力にもなった。

「今シーズンは3年目というのもありますし、すごく勝負の年だなと感じていて、代表監督も変わったこともあります。なおさら自分が出られる環境にいなきゃいけない。

 もうそんなに自分は若くないので、試合に出たい欲がより高まる中で今シーズン開幕からずっとスタメンで出続けられている。ユナイテッドに加入して1、2年、あの苦しいときがあったから今に繋がっているのかなとすごく感じる1年でした」

 さらに、宮澤はこう続けた。

宮澤ひなたがマンチェスター・ユナイテッドWFCで定位置を確保するに至ったきっかけとは

宮澤ひなた

マンチェスター・ユナイテッドWFC加入3年目の宮澤ひなた【写真:Getty Images】

「やっと今スタート位置に立てたというか。自分が求めていたところに達せたなというか、連戦で徐々に試合に出られる、求められていることが高まる中で『もっとやらなきゃいけない。もうここがスタート地点じゃダメだな』って。たぶん普通ならゆっくり感じるところがすごく試合数もあって、ぎゅっとしていたので、それをすべて感じた1年だった」

 宮澤が本職ではなかったボランチに順応するために重ねた努力は少なくはない。

 出場機会が得られるようになったのにはあるきっかけがあった。

「チームのプレースタイル的に最初は前だったり、ワイドを何回かやらせてもらったことがあった。正直、スピードには自信がありましたけど、海外の選手とよーいドンで勝負して勝てるかと言われたら100%勝てるわけではない。それなりにみんなパワーもありますし、意地でも仕掛けるようなそういう姿勢がある」



 競争の激しい世界で生き残るために、このチームで自分が出られるポジションは後ろだとも感じていたようだ。

「監督に10分で自分は何を求められているのか聞きに行って、『正直どこで使おうと考えていますか』というのを自分なりに聞いて、必死ですよね。携帯の翻訳アプリとか使って。監督の意見を聞いた後に『ひなたはどう思うんだ』と言われたので、これだけ前に強くて速い選手がいるんだったら、その選手を活かしたいと。

 自分も仕掛ける側ではありますけど、選手と繋がっていく、人を使うプレーはすごく好きなタイプで、逆に日本人の良さ、自分の良さをこのチームに還元できるとしたら、そこなんじゃないかなというのは伝えましたね」

 宮澤が加入した1年目のユナイテッドは「すごく蹴るサッカーをしていた」というように、ボールを繋ぐサッカーではなかった。

「自分が感情的に伝えたのはそのときが初めてで」宮澤ひなたが強度の高いWSLで遜色なくプレーできる理由

マンチェスター・ユナイテッドWFC 宮澤ひなた

強度の高いウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)でプレーする宮澤ひなた【写真:Getty Images】

 宮澤は細かく「今、右足に欲しかった」と動画を見せるなどして、監督やチームメイトに話をしたが、「選手たちの元々持っているものがあったので、どうしても蹴っちゃう時間帯」があったようで、ボールと人を繋ぐ役割をして欲しいと言われたという。

「自分がこのチームに何かできるとしたら6番(守備的MF)だったり、8番(攻撃的MF)だったり、そういうところの方が自分も自由にできるし、味方をよりやりやすいように活かしてあげることができるんじゃないかなって」

 時間をかけて、自身の意図を伝えていく中で今のユナイテッドでの立ち位置を掴んだ宮澤。

 インテンシティーの高いWSLでは当然、ボランチはフィジカル面が求められるが、身長160cmと小柄な宮澤が遜色なくプレーできているのにも理由があった。

 宮澤はマーク・スキナー監督に直談判した。



「正直、監督にはフィジカルのことを何度も言われました。でも、今から1週間でフィジカルがガンって伸びるわけでもないという話を直接して」

 1対1で戦わなければいけない重要性は感じていたが、チームとしてどこが狙いどころで、ボールをどう取りたいのかが宮澤には見えなかったという。

「試合に出られなくて、出られる環境に行った方がいいのかなともがいていた時期もあって、家族にも言っていました。どうしたらいいんだろうと。ここにいて(ポジションを)奪い取るのも大事ですけど、そのまま同じ使われ方をしていたらその時間ももったいないし、出られる環境にいたい。

 自分が感情的に伝えたのはそのときが初めてで、(前線やワイドでプレーしていた)最初のポジションの話の後だったので、『そう思っていたんだ』というのを監督に言われて、その後や最近とか、本当に今年(2025年)に入ってからですかね。リヴァプール戦でスタメンになって、自分の中でも何か吹っ切れたものがあった。もう失うものはない、やれるだけやってやろうというスタンスで行った。そこから(マンチェスター・)シティ戦もそうですし、上手く体現できたという感覚もあります」

 まだシーズンは折り返したばかりだが、宮澤の中には確かな手応えがある。

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!