元イタリア代表FWロレンツォ・インシーニェが、デルフィーノ・ペスカーラに復帰した。トロントFC時代からの大幅減俸を受け入れてまで、それも過去に1年しか在籍したことがないにもかかわらず、なぜ移籍を決めたのか。そこには、“マルコ”の存在があった。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
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インシーニェがデルフィーノ・ペスカーラに復帰
「幸いにもサッカーには今もロマンがあり、インシーニェとペスカーラのような美しい物語が息づいていると思う」
そう語るのは、DAZNイタリアの名実況者、ピエルルイージ・パルド。元イタリア代表FWロレンツォ・インシーニェとデルフィーノ・ペスカーラ(以下、Dペスカーラ)の再びの邂逅を心から喜んだ。
Dペスカーラは1月29日、インシーニェの獲得を正式発表した。インシーニェは同日18時30分、ペスカーラ市内のメディカルセンターに到着。待ち構えていた100人以上のサポーターから熱烈な歓迎を受けた。
11/12シーズン以来、実に14年ぶりの復帰となったが、サポーターの愛情は変わっていなかった。
20/21シーズン以来、4年ぶりにセリエBに返り咲いたDペスカーラだったが、昇格に導いたシルヴィオ・バルディーニ監督がまさかの退任。今季は開幕から厳しい戦いを強いられている。
第3節では、現在首位のヴェネツィアFCに引き分け、第4節でエンポリFCに4-0と快勝を収めたものの、第5節以降は勝利から遠ざかり、黒星が先行している。
第12節後にはヴィンチェンツォ・ヴィヴァラーニ監督が解任され、ジョルジョ・ゴルゴーネが新監督に迎え入れられた。
しかし、第25節のアヴェッリーノ戦で今季3度目の勝利を手繰り寄せたものの、第14節以降、最下位を脱出できず。第25節終了時点で、勝ち点18と不振に喘いでいる。
インシーニェ復帰をアシストした“マルコ”の正体とは?
インシーニェがメジャー・リーグ・サッカー(MLS)のトロントFCに在籍していた当時の報酬は、額面で1540万ドル(約24億円)に上る。これは2024年のMLS年俸ランキングにおいて、インテル・マイアミCFのリオネル・メッシ(2045万ドル=約31億円)に次ぐ高額だった。
一方、Dペスカーラでの報酬は、手取り30万ユーロ(約5400万円)にボーナスを加えた水準にとどまる。
では一体なぜ、インシーニェは、古巣とはいえ、高額報酬を捨て、セリエB残留が極めて厳しい状況にあるクラブへの復帰を決断したのだろうか。
その理由はこうだ。
「自分がここにいるのは、(ダニエーレ・)セバスティアーニ会長、そして(パスクアーレ・)フォッジャ・スポーツディレクターとの素晴らしい関係があったからだ。でも最後にケーキの上にさくらんぼを載せてくれたのはマルコだ。
彼とは毎日連絡を取り合っていて、背中を強く押してくれた。信じてほしい、この選択を本当に満足している」
“マルコ”とは、11/12シーズンに共にDペスカーラに在籍し、セリエAに導いた腹心の友、マルコ・ヴェッラッティである。
33歳のMFは現在、カタール・スターズリーグのアル・ドゥハイルSCに所属するものの、2025年夏にDペスカーラの株主の一人に就任。ロレンツォよりも“一足早く”帰還し、今回のインシーニェの復活劇をアシストした。
インシーニェはさらに続ける。
「チーロとはよく連絡を取っているけど…」
「自分も新しい仲間たちも、チームを残留させるために全力を尽くす。ここでは特別な1年を過ごした。ペスカーラはセリエBに残らなければならない。目標に到達できることを願っている。この街は残留に値する」
11/12シーズンのDペスカーラといえば、忘れてらないジョカトーレがもう一人いる。28得点を記録し、リーグ得点王に輝いたチーロ・インモービレだ。
前シーズンのセリエBで2得点(ACシエナとUSグロッセートでそれぞれ1得点)だったが、アドリア海に面した街、ペスカーラで得点力を開花させた。
盟友のインモービレについて、インシーニェは、「チーロとはよく連絡を取っているけど、彼をここに呼ぶための“スポンサー役”を務める必要はない。彼は偉大なチャンピオンで、自分が何をすべきかをよくわかっている」と答えた。
2月20日に36歳を迎えるインモービレは昨夏、トルコのベシクタシュJKからボローニャFCに移籍。しかし、太ももの負傷により、セリエAの6試合出場にとどまっていた。
今冬、パリFCへの移籍を決め、インシーニェとはまた異なる道を選択している。
斯くして、Dペスカーラは1月30日、インシーニェの獲得を正式に発表した。契約期間は2026年6月30日までだが、セリエB残留を果たした場合には、自動的に1年延長される条項が盛り込まれている。
トロントFCの一員として最後に出場したのは、昨年6月1日に行われたMLSの一戦、シャーロットFCとの戦いだ。
それから半年以上もの間、公式戦から遠ざかっていたが、2月11日のUSカタンザーロ戦では、10分間の出場を果たした。
実は、インシーニェは、この冬の移籍市場で、もうひとつの古巣に戻る可能性があったという。
