フットボールチャンネル

コラム 22時間前

強豪撃破は偶然ではない。CLで躍進続くボデ/グリムトの強さの秘密とは。ノルウェーのスポーツが大幅に進化した理由【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

CLで躍進続くFKボデ/グリムト
UEFAチャンピオンズリーグでの快進撃が続くFKボデ/グリムト【写真:Getty Images】



 今季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)でサプライズを起こすクラブがある。それがFKボデ/グリムトだ。リーグフェーズでマンチェスター・シティやアトレティコ・マドリードを倒しただけでなく、プレーオフではインテルに勝利。ラウンド16の1stレグでは、スポルティングCPを3-0で一蹴した。なぜ、これほどまでに強いのか、その秘密を探っていく。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]

2025/26シーズンの欧州CLはWOWOWで全試合独占配信中!初回1ヶ月無料でお得に観られるWOWOWに加入[PR]


——————————

ボデ/グリムトの躍進が止まらない

 インテルが、UEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)で、ノルウェーのFKボデ/グリムトに屈した。ノルウェー勢のクラブは、CLはおろか、ヨーロッパリーグ(UEFAカップを含む)でも、決勝に駒を進めたことすらない。

 しかし、FKボデ/グリムトは今季、大きな衝撃を与えている。

 実は、ノルウェーのクラブが、サン・シーロで凱歌を上げたのは初めてではない。ノルウェーのトップリーグ、エリテセリエンで最多優勝26回を誇るローゼンボリBKが、96/97シーズンの欧州CLグループステージで、ミランを破ったことがあった。

 その前シーズンのセリエA覇者、ミランは、アウェイでの第1戦で4-1と赤子の手をひねるように、快勝を収めた。ところが、1996年12月4日、サン・シーロで“事件”は起きた。

 アッリーゴ・サッキが指揮するミランはこの年、不振に喘いでいた。それでも、格下の相手にまさか敗れるとは露にも思わなかっただろう。パオロ・マルディーニ、フランコ・バレージ、そしてロベルト・バッジョらを擁したスター軍団は1-2でまさかの敗戦を喫した。



 このGS最終戦でローゼンボリBKに勝ち点で追い越され、GS敗退の憂き目を見ることとなった。

 ちなみに、ローゼンボリBKは、前シーズンの覇者で、このシーズンの準優勝チーム、ユヴェントスに2戦合計1-3で敗れたが、本拠地での一戦は1-1と引き分ける健闘を見せた。

 これが、これまでのCLにおけるノルウェーのクラブの最高成績である。

 そして、約30年の時を経て、再びノルウェーのクラブが快進撃を見せている。

「ノルウェー・サッカー史の中でも最大級の成功」

 南北に長い国土のノルウェーにおいて、中央に位置するボデを本拠地とするFKボデ/グリムトは、2024年のエリテセリエン王者として、CLに出場。ノルウェーリーグは、酷寒を避けるため、3月に開幕し、11月から12月に閉幕する暦年制のリーグである。

 そのため、2024年王者のFKボデ/グリムトが、参加資格を得ていた。衝撃はプレーオフからだった。

 24/25シーズンのオーストリア・ブンデスリーガ王者、SKシュトゥルム・グラーツを2戦合計6-2で撃破。リーグフェーズでは、トッテナム・ホットスパー、ボルシア・ドルトムントと引き分け、本拠地においては、マンチェスター・シティを3-1で破り、アトレティコ・マドリードには、アウェイで2-1と勝利している。

 収容能力が8,200人のアスプミラ・スタディオンは人工芝で、またこの季節は氷点下まで気温が下がり、この地に乗り込む多くのクラブが苦戦を強いられている。



 21/22シーズンにはUEFAカンファレンスリーグ(ECL)で優勝することとなるASローマを、なんと6-1のスコアで破っている。

 さらに、24/25シーズンにはELのベスト8で、SSラツィオにも2-0で勝利。インテルに3-1で勝利を挙げても、過去のような衝撃とはならなかったが、サン・シーロでの2-1の白星は、サプライズであり、とりわけカウンターからの2点目は、絵に描いたような見事な攻撃だった。

 インテルも、イタリア勢の新たな“犠牲者リスト”に名を連ねることになってしまった。

 ノルウェー・サッカー協会の会長を務めるリーゼ・クラヴネス女史は快挙に胸を張る。

「ミラノで、ノルウェーのチームがアウェイでまたしても素晴らしい結果を残しました」

 さらに「サン・シーロでインテルを破り、2試合合計5−2で勝利するというのは、クラブレベルにおけるノルウェー・サッカー史の中でも最大級の成功の一つです。私はまた、これは現代のCLにおいても、最も驚くべきパフォーマンスと結果の一つだと思います。北極圏の北に位置する人口5万人の小さな町にとって、これは驚くべき経験です」と続けた。

 ノルウェーのUEFAランキングは、10/11シーズンは26位であったが、25/26シーズンは14位まで順位を上げてきている。2022年から会長職を担う44歳のクラヴネスは大きな手応えを感じているはずだ。

クラブに備わる最先端の仕組みとは?

 エリテセリエンは16チームで構成されるノルウェーのトップリーグ。突出するのは、若手選手の多さだ。この5年間、リーグの平均年齢は約22歳で推移している。

 セリエAでは今季、最も若いクラブのパルマでも平均年齢は24.4歳、昨季の覇者で最も年齢が高いナポリは29.8歳である。いかに、若手が活躍するリーグであることが見て取れる。

 FKボデ/グリムトは、寒冷な気候や人工芝だけを武器としているわけではない。彼らの最大の武器は「アルゴリズム」だ。

 1986年創設のこのクラブは、長らく1部と2部を行き来する典型的なエレベータークラブだった。転機となったのは2018年。ヒェティル・クヌートセン監督を助監督から昇格させたことが成功の始まりである。

 すると、その2年後にはクラブ史上初のリーグ優勝を達成。さらにイタリアの強豪ASローマを6-1で撃破し、欧州全土を震撼させた。

 2020年にはサッカー移籍情報を扱うプラットフォーム『TransferRoom』と提携。その後、20代半ばのノルウェー人3人が設立したデータ会社『Fokus』への投資を開始した。



 このスタートアップ企業への投資により、スカウティングを容易にし、自動的にチームに適した選手が抽出されるシステムが構築されている。まさに時代の最先端を行く仕組みが、このクラブには備わっているのだ。

 この『Fokus』のデータを活用しているクラブは、FKボデ/グリムトだけではない。その一つがヴァイキングFKである。

 彼らは2025年のエリテセリエン覇者であり、来季のCLには、2位のFKボデ/グリムトに加えてこのヴァイキングFKも参戦する。

 ノルウェーの南部に位置する本拠地スタヴァンゲルは、1960年代から北海油田の開発が進み、それ以来街は大きく潤ってきた。ヴァイキングFKの本拠地スタジアムは約1万6,000人収容で、FKボデ/グリムトのスタジアムのほぼ倍のキャパシティを誇る。

 しかも全席が屋根付きで、当然ながらピッチは人工芝だ。

 来季のCLでは、FKボデ/グリムトに加え、このヴァイキングFKもビッグクラブにとって脅威の存在となるだろう。かつてバルト海沿岸で略奪を繰り返したヴァイキングのように。

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!