再建か、破壊か。FIFAワールドカップ(W杯)出場を3大会連続で逃したイタリア代表は、大きな岐路に立たされている。ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督辞任を受け、後任候補には意外な名前も浮上しているが、その実現性はどうなのか。イタリア専門ライターの佐藤徳和氏がレポートする。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
イタリア代表が再び監督交代へ
イタリア代表のジェンナーロ・イヴァン・ガットゥーゾ監督が3日、辞任を表明した。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナとのFIFAワールドカップ(W杯)欧州予選プレーオフ・パスA決勝に敗れ、3大会連続で本大会出場を逃したイタリアは、すでにイタリアサッカー連盟(FIGC)のガブリエレ・グラヴィーナ会長、ガットゥーゾを監督に選んだ張本人であった代表団団長のジャンルイージ・ブッフォンが辞任していた。
イタリアは昨年6月7日のW杯欧州予選プレーオフ・グループIの第1戦、ノルウェー代表戦で、0-3と屈辱的大敗を喫した。この敗戦を受け、ルチャーノ・スパッレッティ監督は解任され、後任に任命されたのがガットゥーゾだった。
1978年1月9日生まれのガットゥーゾは、就任会見の場でこう話していた。
「これは夢が叶ったということだ。その重責にふさわしい人間でありたいと願っている。容易な任務ではないことは承知しているが、人生において容易なことなど何一つない。私とスタッフは、やるべき仕事が山積みであることを理解しているが、同時に、素晴らしい仕事ができるという確信もある。
現場に足を運び、選手たちと対話し、彼らの思考の奥底に入り込んでいく作業が必要だ。『才能が枯渇している』という言葉を長年耳にしてきたが、私は選手は揃っていると考えている。
我々はただ、彼らが持てる力を最大限に発揮できる環境を整えるだけでいいのだ。目標はイタリアをW杯の舞台に戻すこと。それは我々自身のため、そして我々のサッカー界にとって、極めて重要なことなのだ」
この発言のとおり、リーノ(ガットゥーゾの愛称)は、限られた時間の中で、イタリア国内にとどまらず、イングランドや中東にも足を運び、選手たちを訪ね、精力的に視察と対話を重ねてきた。
FIGCには、リーグ戦期間中の代表トレーニングキャンプの実施を要求したが、たった3日の期間にもかかわらず、考慮されることもなく、受け入れられなかったが、腐ることなく、不満も言わず、実直に任務を遂行した。
しかし、予選では、ノルウェーに1-4と返り討ちに遭うなど、予選1位の座を最後まで奪うことはできず。
プレーオフでは、準決勝の北アイルランド代表戦に勝利したものの、ボスニア・ヘルツェゴヴィナとの決戦にPK戦の末に敗れた。通算成績は8戦6勝1分け1敗(PK戦は引き分け扱い)だった。
新監督の決定はいつになる?
家族の結びつきを重んじる南部カラーブリア出身とあって、選手やスタッフとの絆を重視するチーム作りが見て取れた。
戦術的引き出しが少なかったように思えることも否めないが、言い訳をせず、すべての責任を背負って矢面に立つ姿は、真のリーダーそのものであった。
「心の痛みと共に、掲げた目標を達成できなかった責任を取り、私の代表監督としての経験はこれで幕を閉じると判断した。アッズーリのユニフォームは、サッカー界に存在する最も貴重な財産だ。だからこそ、今後の技術的な評価を直ちに円滑に進められるようにするのが正しい道だと考えた。
グラヴィーナ会長、ブッフォン、そして常に信頼とサポートを惜しまなかった連盟の全スタッフに感謝したい。代表を率い、献身とユニフォームへの愛着を示してくれた若者たちのチームと共に戦えたことは名誉であった。
しかし、最大の感謝を捧げたいのはティフォージだ。この数か月間、代表への愛とサポートを絶やさなかったすべてのイタリア国民だ。常にアッズーリを心に抱いて」
ガットゥーゾの最後のコメントである。未練や醜さを見せず、潔く引き下がる、まさに「去り際の美学」を感じさせる引き際だった。
W杯出場を想定して、イタリア代表は、大会前に“スパーリングパートナー”を選定していた。ギリシャ代表とルクセンブルク代表との対戦だ。
前者は6月7日、後者は10日に予定されている。敗退を喫した今、必ずしも必要な試合ではなくなってしまい、キャンセルすることも可能なようだが、違約金が発生するため、現時点では行われる可能性が高い。
また、FIGCの会長選が、W杯開催期間中の6月22日に実施される予定となっているため、空席となった新監督の決定もそれ以降となる。
そのため、この2試合を、“トラゲッタトーレ(橋渡し役)”に任せなければならない。
その、悲しき任務を任されるのが、現U-21代表監督のシルヴィオ・バルディーニとなる見込みだ。
後任候補に挙がるのは5人
これは2018年3月、ジャン・ピエロ・ヴェントゥーラが解任され、ロベルト・マンチーニが就任する前に、当時のU-21監督ルイージ・ディ・ビアージョが代行を務めた前例に倣うものである。
経験豊富で、若手の育成に長けたバルディーニを推す声も強いが、上記の2試合で圧勝を飾ったとしても、バルディーニがそのままA代表の指揮官に留まり続けることはないと見られる。
ガットゥーゾの後任候補に挙がっているのが、5名である。マッシミリアーノ・アッレグリ、シモーネ・インザーギ、マンチーニ、アントニオ・コンテ、そして、イタリア人ではない、大物監督の名も浮上している。
アッレグリは、6日のSSCナポリ戦前日の記者会見に臨み、去就問題に答えた。
「現時点では、まだ考えていない。今はミランを指揮している。ここにいられることを嬉しく思っているし、ロッソネーリに長く留まることを願っている」と語った。
さらに「代表については、私や他の誰か次第ということではなく、イタリア・サッカー界のシステム全体の問題だ。すべてを投げ出す必要はない。もし来季も私がここにいるならば、再びチャンピオンズリーグに慣れる必要があるだろう。かつて一度はCLから離れ、監督を解任されたからね。再びあの舞台に戻ることは、私にとってこの上ない喜びだ」と続け、代表監督での指揮には関心を持っていないことを強調した。
57歳の指揮官は、2027年6月30日まで、ミランとの契約を結んでおり、本人のコメントを尊重すれば、代表監督就任は難しいと見られる。
この5人の中で最も若いのがインザーギだ。5日に50歳の誕生日を迎えたシモーネは、インテルでは、23/24シーズンにスクデットを獲得し、またCLでは2度、決勝に導いている。
パリ・サンジェルマンとのCL決勝に敗れたあと、サウジ・プロフェッショナルリーグのアル・ヒラル監督に就任した。
ピエモンテ生まれのインザーギは、地元紙『リベルター』のインタビューで「イタリアが3大会連続でW杯に出場できないことは、非常に大きな悲しみだ。私は100パーセントのイタリア人であり、兄(フィリッポ)はW杯で優勝もしている。イタリアサッカーはすぐに立ち直ると確信しているし、常に最大限の関心を持って見守っている」と語り、イタリア代表への思いを語った。
しかし、代表監督への興味は一蹴。「光栄なことだが、私はサウジアラビアでの生活にこれ以上ないほど満足しているし、アル・ヒラルとの契約もあと1年残っている」と言及している。



