1980年代後半から2000年代前半にかけて黄金期を築いたイタリア・セリエA。中田英寿や中村俊輔といったレジェンドも同舞台で輝くなど、日本人に馴染みの深いクラブが多かった。しかし、そこから深刻な財政難を理由に、現在はかつてのような存在感を失ってしまったクラブも目立つ。今回は、そのようなクラブをピックアップ。輝かしい歴史と、あまり知られていない“今”を伝える。第2回はチェゼーナFC。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
長友佑都も在籍していたチェゼーナ
かつて、長友佑都の活躍で一躍脚光を浴びた、ACチェゼーナ(現チェゼーナFC)が、再びスポットライトを集めている。その理由は、アシュリー・コールが新監督に就任したからだ。
なぜ、イングランドのレジェンドが、現在セリエBを戦うプロビンチャのクラブの指揮を執ることとなったのか。長友在籍以降のクラブの歩みをたどりながら、その経緯に迫る。
2010年7月14日、エミーリャ・ロマーニャ州の地方都市チェゼーナの中心街にあるアレッサンドロ・ボンチ劇場には、多くの日本人ジャーナリストの姿があふれていた。
それは、FC東京から買取オプション付きのレンタル移籍で加入する長友の入団会見に出席するためであった。
当時24歳のジャッポネーゼは、「温かく迎えられた。街の中心を見て気に入ったし、食べたパスタも気に入った。自分の技術的な特徴として最も優れているのは走力と相手を抜き去る能力だと考えている。チェゼーナは自分のキャリアにおける重要な節目となる」と、笑顔で語った。
そして、レガ・プロ・プリーマ・ディヴィジョーネ(3部リーグ)から2年連続での昇格を成功させた当時36歳の青年会長イーゴル・カンペデッリは、獲得に至った経緯をこう説明している。
「これはマーケティング目的の補強ではないということをはっきりとさせておきたい。ナガトモは(マッシモ・)フィッカデンティ監督によって継続的にチェックされ、望まれた。彼は日本のサッカーもよく知っている」
この時、日本人選手の中でも小柄な部類に入る長友が、サッカー大国イタリアで、わずか半年後、この会見から53日前に、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制したインテルへ移籍することになるとは、誰も思い描いていなかったはずだ。
長友佑都退団。クラブは破産寸前へ
長友はACチェゼーナでの1年を待たずして、2011年の冬にインテルへと移籍する。鹿島アントラーズやミランなどでプレーしたレオナルドが、強く獲得を望んだことが背景にあった。
威風堂々とダイナミックにサイドを躍動するプレーが評価された結果である。
長友が去ったACチェゼーナであったが、19年ぶりとなったセリエAで残留という目標を達成する。降格圏を抜け出せない状況が長く続いたものの、最終的に15位でシーズンを終えた。
だが、シーズン終了後、フィッカデンティ監督が退任し、カリアリ・カルチョへと移る。
また、レガ・プロ・プリーマ・ディヴィジョーネから2年連続の昇格に大きく貢献したエマヌエーレ・ジャッケリーニも、ACチェゼーナと同じカラーのビアンコネーロのユヴェントスへと引き抜かれた。
クラブは、ルーマニアのスター、アドリアン・ムトゥの獲得に成功するものの、マルコ・ジャンパオロ、ダニエーレ・アッリゴーニ、マリオ・ベレッタの3人が指揮を執ったチームは、11/12シーズン、第27節以降、一度も降格圏を脱出することができず、降格の憂き目に遭う。
セリエBで迎えた12/13シーズンには、イーゴル会長の弟ニコーラ・カンペデッリがトップチームの指揮を任されることとなるが、チームは低空飛行に終始する。
さらに、2012年12月7日、イーゴル・カンペデッリは会長職を退く。そして、2007年までの5年間にわたり会長を務めていたジョルジョ・ルガレージが再登板することとなった。
しかし、5年半に及んだカンペデッリ体制の終焉時点で、クラブは約3500万ユーロ(約63億円)の負債を抱え、破産寸前にあるように見えた。
クラブ資金の扱いに不適切な運営があったのではないかとの疑いから、捜査当局はカンペデッリおよびクラブ幹部らを、虚偽請求書発行および税法違反の容疑で被疑者名簿に登録した。
78年の歴史の末に初めて破産
ルガレージ会長はクラブの破産回避を目的として、多くの地元企業家グループに支援を求め、サポーターもクラブ支援のために動いた。
こうして差し迫った財政問題は一時的に解決されると、13/14シーズンはリーグ4位に入り、プレーオフを勝ち抜いてセリエA昇格を果たす。
クラブとサポーターの結束がクラブ消滅の危機を乗り越え、さらに3年ぶりのセリエA復帰を勝ち取ることとなった。
だが、この時のACチェゼーナにはセリエAを戦い抜く戦力はなく、全チーム中最低の4勝にとどまった。19位に終わり、再びセリエBへと降格する。
そして迎えた17/18シーズンは、序盤から厳しい戦いを強いられたものの、終盤の挽回で13位に終える。
しかし、架空のキャピタルゲインが発覚し、勝ち点15の減点処分を科され、最終的に勝ち点35で最下位に転落し降格となった。
さらに2018年7月16日、取締役会はフォルリー検察庁が申し立てた破産申請を受け入れ、18/19シーズンのセリエBへの登録を断念する。
クラブはセリエB残留を果たしていたにもかかわらず、重大な財務不履行により、78年の歴史の末に初めて破産した。
コッラード・パトリニャーニ新会長のもと、クラブはセリエDから再スタートを切り、18/19シーズンにセリエDグループIを制覇。クラブ名をチェゼーナ・フットボール・クラブとし、プロリーグへの復帰を果たした。
