ハイドレーションブレイクで意思統一を行うサッカー日本代表【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ(W杯)は、サッカーの祭典であると同時に、世界最大級のスポーツビジネスの舞台でもある。大会をより魅力的なものにするため、新たなルールや制度が導入されることも少なくない。北中米W杯で採用される“新ルール”も、その象徴のひとつと言えるかもしれない。[1/1ページ]
今回の試合で話題となった“新ルール”

アイスランド代表が一人少ない状態で生まれた小川航基のゴール【写真:田中伸弥】
31日、サッカー日本代表は国立競技場でFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)に向けた壮行試合を行い、アイスランド代表に1-0で勝利した。W杯前最後のテストマッチということもあり、大きな注目を集めた一戦だった。
この試合は『DAZN』だけでなく、地上波でも中継され、W杯開幕へ向けた機運をさらに高める機会となったのではないか。
また、今回のテストマッチでは、W杯本番を想定した“新ルール”が適用されたこともポイントのひとつだった。
スローインやゴールキックに関する「5秒ルール」、選手交代時の「10秒ルール」など、これまでとは異なる運用が導入され、選手たちは対応を求められた。
実際、日本代表が小川航基のゴールで先制した場面は、アイスランド代表の選手が交代時の「10秒ルール」に抵触し、一時的に10人となっていたタイミングで生まれたものだった。
細かなルール変更が、試合展開に影響を与える可能性を感じさせるシーンだったと言えるだろう。
一方、ピッチ上の選手たちとは別に、地上波で試合を視聴していたファンが違和感を覚えたのは、試合中に設けられた飲水タイムかもしれない。
競技とビジネスを両立する3分間

サッカー日本代表の選手たち【写真:Getty Images】
“ハイドレーションブレイク”と呼ばれるこの新ルールは、昨年12月に国際サッカー連盟(FIFA)が今大会での採用を発表したものだ。
酷暑が予想される北中米での開催を踏まえ、選手の水分補給や体温調整を目的とした措置として導入が予定されている。
ただし、このルールには競技面だけでなく、ビジネス面での狙いもあると推測される。
前後半にそれぞれ1回、3分間の休息時間が設けられる為、スポンサーにとっては新たな広告枠として活用することができるのだ。
そして今回の地上波中継では、23分を過ぎたところで試合が一時中断され、3分間に約30秒のCMが3本挿入される構成となっていた。
近年のサッカー中継では、試合中にCMが挿入される機会がほとんどなかったこともあり、“ハイドレーションブレイク”という聞き慣れない言葉は、SNS上で大きな話題となった。
この「3分」という時間設定は、競技面とビジネス面の双方にメリットをもたらすように設計されている点で、実に合理的だ。
サッカーは、野球やバスケットボールと異なり、試合の流れの中で明確な中断がなく、試合中にCMを差し込むことができない。この特性は、これまでマーケティング面で課題として指摘されてきた側面もある。
しかし、3分間のブレイクは、選手にとって十分な回復時間となり、試合の流れを過度に分断することもない。
また、放送局側にとっても、尺があらかじめ固定されたCM枠として編成しやすく、運用上のメリットは大きい。
こうした設計は、NBAやNFL、MLBといった人気スポーツに見られる、中断そのものを収益機会として組み込む発想とも通じている。北中米開催らしい合理性が反映された仕組みと言えるかもしれない。
同じ試合中断でも…

サッカー日本代表の森保一監督【写真:田中伸弥】
2018年のロシア大会で初めて導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)も、サッカーに大きな変化をもたらしたルールのひとつだ。
しかし、判定確認のために試合そのものが中断されるため、選手にとっては試合のリズムが途切れる要因にもなり得る。
一方で、“ハイドレーションブレイク”は同じ中断でありながら、意図的なインターバルとして設計されている点で性質が異なる。
この時間を利用して、監督やコーチから戦術的な指示を受けたり、チームメイト同士で意思統一を図ったりすることが可能だ。
もちろん、試合の流れは一時的に止まってしまうが、選手にとってのデメリットは比較的小さいと言えるだろう。
実際、この貴重な「3分間」をどう活用するかは、W杯本番で勝敗を左右するポイントのひとつになるかもしれない。
各国がこの新ルールをどのように活用するのか。そして、与えられた短い休息時間を最大限に生かし、W杯を有利に戦い抜くチームが現れるのか。
大会本番に向けて注目したいポイントのひとつだ。
(文:佐藤彰太)
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