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日本代表、伊東純也はどうやって高精度クロスを蹴っているのか? “虹クロス”の秘密を解剖する【前編】

text by 三浦哲哉 photo by Shinya Tanaka

イングランド代表戦のサッカー日本代表 伊東純也
サッカー日本代表 伊東純也【写真:田中伸弥】



 伊東純也選手の特徴といえば、「虹」のような放物線を描いたクロスボールと「稲妻」さながらの高速ドリブルが挙げられる。史上最強との呼び声が高いサッカー日本代表アタッカー11人の「動作的特徴」と「身体的特徴」を徹底的に解析した『サッカー日本代表アタッカー動作解析図鑑』より、電光石火のスピードでサイドの覇権を握る快速ドリブラー伊東純也選手の「黄金の右足」から繰り出される七色の高精度クロスについて紐解いて迫った章を一部抜粋で公開する。前編(文:三浦哲哉 )

美しいクロスの秘訣

伊東純也 日本代表
伊東純也はどうやって高精度クロスを蹴るのか?【写真:田中伸弥】



 電光石火のスピードでサイドの覇権を握る快速ドリブラー、「イナズマ純也」こと伊東純也選手は、雷鳴轟く漆黒の闇を切り裂く「稲妻」さながらの鋭いスプリントと、嵐が去った後の澄み渡った空にかかる「虹」のようなきれいな放物線を描いたクロスボールで、数多くのチャンスを演出しています。

 フランスのスタッド・ランスに所属していた2024年12月、米国メディア『The Athletic』が公表した、決定的なパスを示す「キーパス」のスタッツで、欧州五大リーグのトップとなったことが話題となりました。

 日本代表の朋友、左利きの久保建英選手や堂安律選手と異なり、右利きで右サイドを主戦場とする順足のサイドアタッカー伊東選手の生命線となる、「黄金の右足」から繰り出される七色の高精度クロスについて、まずは紐解いていきましょう。

 サッカーのキック動作では、スイングする蹴り足は、股関節と膝を支点とした「二重振り子」と呼ばれる、身体の中心側から大腿↓下腿と順番に勢いよく振り出されてくる動きをします。

 キックのうまい選手は、蹴り足全体をちょうどしなりの効いた「ムチ」のように使ってスイングスピードを速くすることで、強いボールを蹴ることができます。

 これに加えて、サイドからのクロスは、縦に助走しながら中央めがけてインフロントキックでカーブボールを蹴っていくことが基本となるため、前方へのスイングに合わせて蹴り足側(右)の骨盤が前に出るようなかたちで、ボールインパクトで水平方向に捻る力を加えていく必要があります。

 私は、クロスを蹴るために最も重要となるこの一連の動きを、「骨盤の回旋と連動して、蹴り足を内側に振り抜く」と表現しています。

キックの名手ケヴィン・デ・ブライネも…

ベルギー代表MFケヴィン・デ・ブライネ
伊東純也とケヴィン・デ・ブルイネの共通点とは?【写真:Getty Images】



 体幹と骨盤の安定性や捻る力に寄与する、腹〜腰回り・下腹部の筋群と、両側の股関節の協調がキーポイントになります。

 軸足の踏み込みでは、助走の勢いにブレーキをかけることで「起こし回転」のバネが生まれ、すねが前に倒れる動きと股関節の伸展によって、身体が前方に推進していきます。

 膝を固定しながらすねを前に倒していく技術は「膝を抜く」動きと呼ばれ、キックでも重要な役割を果たしています。

 水平方向の動きに着目すると、軸足の股関節のスムーズな内旋によって、骨盤の回旋が誘導されます。

 さらには、①短い助走でのクロスと②走りながらのクロスでは、軸足の使い方と蹴り足を振り抜く角度が変わってきます。

 伊東選手は、この両方の局面での身体の使い方がダントツでうまいため、精度とスピードを兼ね備えた多彩なクロスボールを蹴ることが可能になります。

 ①の短い助走でのクロスでは、軸足の股関節を伸展していく動きが主導となり、身体が前上方に起き上がる力がボールインパクトに加わります。

 蹴り足は内側にスパッと振り抜かれるため、フォロースルーからのフィニッシュは軸足が伸びた状態で蹴り足が高く上がるシルエットになります。

 ②の走りながらクロスを蹴る場合は、助走での勢いをコントロールする必要があるため、軸足の「膝を抜いて」すねが前に倒れていく動きが主導となり、水平方向に重心移動する力がボールに加わります。

 蹴り足は、①のときほど高く振り上げるかたちにはならないものの、しっかりと内側に振り抜かれます。

 ボールの置きどころをやや右斜め前にして、こするようにではなく足の甲の内側でドンッと強くインパクトさせて、中央にいるDFの頭上を越えた後にクッと落ちるような軌道のクロスを蹴るのが、伊東選手流です。

 これらの二種類の蹴り方がクロスの基本になり、トップクラスの選手ほどハイレベルで兼備しています。

 伊東選手と同じく、ベルギーのヘンクに所属した経歴のあるキックの名手ケヴィン・デ・ブライネ選手は、その代表格といえるでしょう。

 ふたつの基本の「型」の質が高いと、グラウンダーとハイボールの蹴り分けはもちろん、ニアサイドからファーサイドまでの広範囲を射程圏内に入れることができ、さまざまな局面での応用も効きやすくなってきます。

(文:三浦哲哉)

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【了】

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