
北中米W杯のオープニングセレモニーの様子【写真:Getty Images】
シャキーラとバーナ・ボーイの「Dai Dai」、アンドレア・ ボチェッリとデヴィッド・ゲッタ、EJAEとミーガン・ザ・スタリオンによる「DNA」。今大会の公式ソングとアンセム、そして各スタジアムで鳴らされる音楽に耳を傾けると、そこが世界そのもののような気がしてくる。
音楽にみる「脱ホスト国」
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かつてW杯の公式ソングはホスト国の色を強く帯びていた。2010年南アフリカ大会のシャキーラ「Waka Waka」はアフリカのリズムを正面から取り込み、2014年ブラジル大会の「We Are One」はサンバの匂いがした。
それが2018年ごろから希薄になってゆく。
ロシア大会ではNicky Jam、Will Smith、Era Istrefiによる「Live It Up」が公式ソングとして採用され、レゲトン、ポップ、R&Bを折衷した国際色の強い仕上がりで、同国の土着的な気配はほぼなかった。
2022年カタール大会では複数の楽曲からなる「公式サウンドトラック」形式が導入され 、各楽曲にはBTSのジョングクをはじめアメリカ、ナイジェリア、カタール、韓国などからスターが集結した。
そして今大会、公式ソング「Dai Dai」はコロンビア出身のシャキーラとナイジェリアのバーナ・ボーイによるアフロビーツ×ラテンの融合で、サビには英語・スペイン語・フランス語・日本語・イタリア語の5言語が並ぶ。
公式アンセム「DNA」はイタリアのアンドレア・ボチェッリ、フランスのデヴィッド・ゲッタ、韓国系アメリカ人のEJAE、アメリカのミーガン・ザ・スタリオンという4カ国4ジャンルの混成で、英語・韓国語・イタリア語の3言語で構成される。
いずれも開催国であるアメリカ・カナダ・メキシコを越えて、グローバルな視座がある。こうした脱ホスト国的なスタンスは、スタジアムの中にも広がっている。
試合中にかかる「Titanium」や「Mr. Brightside」は今や世界的なアンセムであり、日本サポーターの耳にはウカスカジーの「勝利の笑みを君と」が聞こえてくる。
「Mr. Brightside」を歌うザ・キラーズは「アメリカが生んだ最も英国的なバンド」として、グラストンベリー(イギリス最大の音楽フェス)などでヘッドライナーとして躍動する。「Titanium」は「DNA」を手掛けたゲッタのプロデュースで、シンガーはオーストラリア出身のシーアだ。
そして今大会であらゆる国籍のサポーターが大合唱するのが、ボン・ジョヴィの「Livin’ on a Prayer」(1986年リリース)。本来サッカーとは無関係の、社会に翻弄されるカップルが主人公の楽曲だが、「やるしかねぇ」というメッセージは時を超えてフットボールのピッチにこだまする。
ピッチの上も、スタンドも、スピーカーも、それぞれの「世界」が重なり合い、それぞれの「私たち」に降り注ぐ。FIFAが公式ソングに込めてきたメッセージは、いつの間にかスタジアム全体に分散していた。
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