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大学サッカーは実力に見合った評価が下されているか?(後編)

text by 後藤勝 photo by Masaru Goto

注目選手は富山と清武!!

 準決勝が終わったあと、注目の早大10番富山貴光は「福岡大学よりもぼくたちのほうが優勝したいという気持ちは強い」と言い切った。

「自分だけじゃない。味方が10人いるし、試合に出ていない選手も自分にやれることを精一杯やってきているから、こういう結果になっていると思う。出たくとも出られない選手の思いを背負ってやれるのはかぎられた選手しかいない。自分が先頭に立ってその思いを体現しないといけない」

 諸事情で試合に出場できない畑尾大翔に話が及ぶと、熱く仲間思いの男、富山は涙ぐんだ。畑尾は四年生ながら、試合の準備と片づけに奔走し、チームメイトを勇気づけ、相手チームの一員として出場したFC東京U-18時代の仲間をも励ましていた。

「いちばん悔しいのは大翔(ひろと)自身だと思います。そういう姿をピッチでは見せないで、練習のときも死ぬ気であいつはやっていて。練習中から胸にこみ上げるものがあります。大翔だけでなく、ほかにも苦しい思いをしている選手はいっぱいいると思うし、(比べたら)自分の苦しさはちっぽけなことだと思う。そういうことを噛み締めて、優勝という結果でみんなでいい景色を見て恩返ししたいという気持ちが強い」

 切り換えを速くして前からプレッシャーをかけるハードワークと、判断の早い連動した攻撃が早稲田大学の持ち味だ。そしてそうした戦う姿勢や走っている姿で人を感動させ、子どもに夢を与え、大学サッカーの魅力を伝えたい──と富山は言う。

 当たられても倒れない、倒れてもすぐに立つ。「演技はするな。プレーをしろ」と言った大木武監督(京都サンガF.C.)のポリシーにも通じそうな真摯な姿勢は、富山が言うように、カテゴリーの枠を超えて人々を感動させるにちがいない。

 1月6日の決勝が楽しみだ。


早稲田大学・富山貴光

 最後に、個々の選手について少し触れておこう。

 早稲田大学の富山は前田遼一と大迫勇也とルーカスと矢島卓郎と田代有三が魔獣合体したような脅威のセンターフォワードだ。バネのある強い肉体を活かしてのポストプレーに勤しむだけでなくサイドに流れて起点ともなりラストパスを送り、自らフィニッシュもする頼もしさ。富山を獲得した大宮アルディージャはいい買い物をした。ぜひ大宮のサポーターは富山を応援するために、国立に足を運んでほしいと思う。


福岡大・清武功暉

 福岡大学の清武は兄・清武弘嗣に優るとも劣らないミッドフィルダーだ。準決勝では彼が途中出場してからがらりと流れが変わり、「夏の王者」総理大臣杯優勝の阪南大学に逆転勝ちした。ゲームを読む戦術眼、技術の高さはスーパーで、ロングスローのスローワーとしても活躍する。

 一回戦で足を痛めたために準々決勝と準決勝はベンチスタートだったが、中二週間で臨む決勝では万全の体調で先発することだろう。さすがに鳥栖市民が新年早々に飛んでくるのは厳しいかもしれないが、関東在住のサガン鳥栖サポーターは国立に駆けつけてみてはいかがだろうか。

 もちろん、このふたりは代表級の逸材。サッカーファンすべてにとって注目の対決となるだろう。

【了】

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