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大学サッカーは実力に見合った評価が下されているか?(後編)

二年前からJリーグの新人に於ける過半数を大学サッカー出身者が占めるようになり、そのタレントの豪華さから言えば、既にインカレは高校選手権を遙かに凌駕している。大学サッカーが持つレベルと、その存在意義を、いくつかの角度から分析していく。

text by 後藤勝 photo by Masaru Goto

【前編はこちらから】

高橋秀人が語る大学サッカーの意義

 東京学芸大学からFC東京に進み日本代表になった、大学経由プロ選手としての成功例である高橋秀人は、大学サッカーのいいところを次のように指摘した。

「学業が優先のところもあればサッカー経験者が集まるところもあり、コーチが学生のコーチのところもあれば、監督が仕事で土日にしか来ることができないところもある。大学はそれぞれに事情があってスタンスが異なるので、そこが見どころだと思います。

 学芸は選手のミーティングをしっかりして学生が主導でやるんですよ。忘れ物があったら、チーム全体で考えてどうするか対処を決める。これから社会に飛び立つわけだから、そこも社会人と同じ基準でやらないといけない、学芸はそういうルールがしっかりとあるんです。

 私立だったら人工芝のグラウンドで、プロのコーチと提携して一流の指導をされていると思う。大学生は高校からプロに上がれなかった人たちの集まりだから、スカウトの眼に留まろうとアピールする気持ちも高校生よりは強いと思うし、でもそのなかで、就職活動もしないといけない。22歳は自分の進路が決まってしまうときでもあり、そういう悩みを抱えながらもサッカーをしている」

 そうした人生がピッチに投影される大学サッカーには、たしかに独特の雰囲気がある。学生自身の手で大会を運営し、ベンチ外の選手が率先して用具の片付けなど裏方の仕事に勤しむ。

 プロになる選手も就職する選手も、自分で考え、自分で責任をもって決断する。その結果がインカレのピッチにあらわれるのだとすれば、清々しさの発露にも納得がいく。

 ベスト4で散った鹿屋体育大学のキャプテン山崎侑輝(FC東京U-18出身、「パブロ」の愛称で親しまれている)。教員免許の取得を志しながらプロサッカー選手の路も模索してきた彼は、早稲田大学に0-5と大敗した試合後にぼろぼろと大粒の涙を流した。先発メンバーにJユース出身者が自らとゴールキーパー井上亮太のふたりだけというチームを率いて全国ベスト4、個人としてはロアッソ熊本への入団を内定させ、これ以上はないというくらいがんばったのだから、それくらい泣いてもいいだろう。

 東京から遠く離れた鹿児島の地での四年間の大学生活を「楽しかった」「監督に感謝したい」と振り返る山崎はとても気持ちのいい青年だった。

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