プレミア流 ワイドアタックの戦術的進化(前編)

2012年12月29日(Sat)17時41分配信

text by 河治良幸 photo Kazuhito Yamada
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プレミアでオーソドックスな4-4-2が多いワケ

 ワイドアタックを語るにあたって、フォーメーションとの関係性を無視することはできない。伝統的な中盤をフラットにした4-4-2であれば、少なくとも2人がサイドに張り、シンプルな展開から放たれたクロスにFWの2人が合わせる、という基本原則が存在する。


[上]はマンU などに見られる中盤フラットな4-4-2。少なくともサイドに2人が張り、シンプルにクロスを上げやすい。[下]は4-2-3-1。ポゼッション率を高めて空いたスペースを狙うアーセナルがよく用いている。
※図は2011-2012シーズン

 早くは1960年代からこの形を採る傾向がイングランドにはあったが、それはハイテンポな現在のサッカーにもマッチしている。つまり激しく攻守の切り替わる場合でも、安定したワイドアタックを維持することができるからだ。その4-4-2を基本フォーメーションとして用いているクラブは、プレミアリーグ20クラブ中の約半数を占める。もちろんマンチェスター・ユナイテッドの様に複数の形を使い分けるクラブ、シーズンの流れで変更しているクラブもあるが、基本的なワイドアタックの志向がそうした傾向をもたらしていることは確かだ。

 その一方で、4-2-3-1を基本フォーメーションとして用いるチームがイングランドでも増えてきた。それぞれのサイドに確保する人数は4-4-2と同じ2枚だが、基本的には中盤のボールポゼッションを重視しながら、センターとワイドを満遍なく使って攻める意図がある。その流れでクロスを上げても、固定的にはゴール前に1人しかいないが、トップ下や逆サイドから飛び出すことで、流動的にそれを埋めるという考え方が存在するのだ。

 また、格上相手や敵地での戦いには守備的な4-1-4-1を用いるチームもあるが、それでも攻撃時にはワイドに2人を割き、かつ中盤の誰かが飛び出してフィニッシュに厚みを加えていくことを想定している。チェルシーが採用する4-3-3はイングランドにおいて少数派だが、中盤を逆三角形のトライアングルにすることで、ポゼッションを高めながら、中盤のインサイドハーフを含めた3人のトライアングルをワイドに形成することができる。

 それが機能さえすれば、厚みとバリエーションに富んだワイドアタックを実現できるわけだが、例えば相手にボールを支配されると3人がバラバラになり、ワイドアタック自体が停滞しやすい。そうしたワイドアタックの基本的志向はフォーメーションにも反映されるが、その中でもチームによる攻撃パターンの違いや戦術的なバリエーションが存在するのだ。

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