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日本代表 11年前

佐々木則夫のマネジメント ~なでしこを統率した5つの経営者的マネジメントセンスを読み解く~

text by 江橋よしのり photo by Kenzaburo Matsuoka


佐々木則夫のマネジメント【写真:松岡健三郎】

佐々木流マネジメント②目標の共有
『コンセプトの明確化』

 また、女子選手の運動能力、活動量を見抜くと、現実的なプランを構築した。

「横幅68mのピッチを網羅するには、4人が横に並ぶのが理想的」とし、中盤をフラットにする4ー4ー2のフォーメーションを提案。さらに、練習の量と強度も最適化させた。曰く「一般的に女子選手は、一気に限界まで力を出し切らせる練習よりも、集中力を長時間持続させる練習のほうが向いている」。

 なお、チームコンセプトを選手たちに注入する際には、映像やパワーポイントの資料を多用したプレゼンを披露したという。中には「いやいやノリさん、それは女子には無理ですよ」といった消極的な反応を見せた選手もいたというが、「まずやってみよう。できるかどうかは、それから考えればいい」と、佐々木は背中を押した。

佐々木流マネジメント③適材適所の人材配置
『選手のポジション変更』

 選手たちの能力を発揮しやすくするためには、大胆な人材配置も行った。代表的な例が、一貫して攻撃の柱を担っていた澤穂希と、伸び悩んでいた若手ストライカーの阪口夢穂の2人を、ボランチに転向させたことだ。

「澤がボールを奪う機会を増やせば、なでしこは攻撃のチャンスを増やせる。ボールを奪うセンスに最も優れているのは、澤だから」という理由だ。また阪口に関しても、ボールの落下点を見極める能力、ヘディングの強さを理由に、「DFの一列手前で相手のロングパスをはね返すには、うってつけの選手」と、大きく化ける可能性を認めていた。

 佐々木には、自分好みのチームを作るために、選手を都合よく管理下に置こうとする発想も、固定観念もない。澤も阪口も、自分好みのボランチを置きたくて転向させたわけではない。あくまでもマーケティングを軸に、最も効果的な戦い方を模索した結果だった。

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