佐々木則夫のマネジメント ~なでしこを統率した5つの経営者的マネジメントセンスを読み解く~

2013年01月07日(Mon)19時31分配信

text by 江橋よしのり photo Kenzaburo Matsuoka
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佐々木流マネジメント④PDCAサイクルの運用
『戦術上の柔軟性とリカバリー』

 こうして、目標達成のための計画を定めると、合宿や大会のたびに、ビジネスシーンで活用されるPDCAサイクルを繰り返した。P= Plan(計画)、D= Do(実行)、C = Check( 検証)、A =Act(処置・改善)である。自分たちよりもフィジカル能力の高い男子高校生、大学生との練習試合や、国際試合を録画した映像を頻繁に活用し、「できたこと」「できなかったこと」を検証して、次の試合に向けて改善していった。

 なお、PDCAサイクルを回す過程で、佐々木はある時点から選手との距離感を修正した。W杯予選を無事に突破した2010年夏以降、「1年後のW杯で優勝する」という全員で決めた目標に向かって、佐々木は「自分たちの判断でゲームをコントロールする」というテーマを選手たちに与えた。ここから佐々木は、練習でも試合でも、戦術的な指示を送る機会を減らしていった。

 北京五輪までのなでしこは、詰め込んだコンセプトを実行しようとするあまり、相手に主導権が渡っても一本調子のプレーに偏る弱点があった。だが、世界の頂点に立つ過程を考えれば、自分たちがずっと同じリズムでプレーできる試合ばかりとは限らない。そこで佐々木は一歩引く覚悟を決め、「自分たちで試合を組み立ててみよう」と、選手たちにうながした。

「ノリさんは何も言ってくれなくなった」。そういった批判がチーム内から噴き出すリスクもあった。選手任せで大事な試合に負ければ、自らの首が飛ぶ可能性もゼロではなかった。それでも佐々木は、「クライアント」である選手の解決能力を引き出すために、あえて口を挟もうとしなかった。

 結果、2010年のアジア大会で、なでしこジャパンは中国、北朝鮮に押し込まれながらも初の金メダルを獲得。試合ごとの課題修正は、選手主導によるミーティングで培われたものだった。なお、そのような選手主導で意思決定する流れは、2011年の女子W杯、そして2012年のロンドン五輪にも受け継がれた。佐々木は言う。「大会中に監督があれもこれもと口出ししては、チームはうまくいかない。監督はメンバーの選出など、大きなことだけ決めればいい」

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