佐々木則夫のマネジメント ~なでしこを統率した5つの経営者的マネジメントセンスを読み解く~

女子W杯優勝、ロンドン五輪準優勝を果たした佐々木則夫監督。2011年にアジア人として初めてFIFA女子世界最優秀監督賞を受賞し、2012年も同賞の最終候補の3名に選出されている。そこで今回は、なでしこジャパンが躍進した背景にある、指揮官の手腕を検証していく。

2013年01月07日(Mon)19時31分配信

text by 江橋よしのり photo Kenzaburo Matsuoka
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【サッカー批評issue58】掲載

佐々木流マネジメント①マーケティング
『対戦国の情報収集・分析』

「選手は僕のクライアント。監督の役目とは、選手という乗客を乗せた馬車となって、目的地まで送り届けることなんだ」

 なでしこジャパン(日本女子代表)を2011年女子W杯優勝に導くと、自身も同年度のFIFA女子最優秀監督賞を受賞。翌2012年のロンドン五輪でもチームに銀メダルをもたらした。なお、チームのFIFAランクは、就任前の10位から一度も順位を下げることなく、現在3位にまでアップした。

 なでしこジャパン躍進の背景には、冒頭の引用文の発言者である佐々木則夫監督による、選手たちの向上心を刺激する緻密なマネジメントがあった。もちろんその前提として、選手たちに実力が備わっていたことは間違いないが、かといって、なでしこたちは誰が監督でも同じ力を発揮できたわけではないだろう。

 W杯以降、佐々木の陽気で気さくな性格は広く知られることとなった。選手と目線の高さを揃えて接する「横から目線」のコミュニケーションや、オヤジギャグを選手からイジられるといったパーソナリティは、従来の監督像とは一線を画している。かといって、佐々木のキャラクター性ばかりを掘り下げても、なでしこの成功をひもとくことにはならない。実のところ、佐々木によるチーム強化の本質は、彼自身が備えていた経営者的手腕に拠るところが大きい。

 佐々木流マネジメント術を端的に表すと、こうなる。

1.マーケティング
2.目標の共有
3.適材適所の人材配置
4.PDCAサイクルの運用
5.ソーシャルネットワーキング

 監督就任からさかのぼること約2年。なでしこジャパンのコーチに就任した佐々木は、まず自チームとライバルとの現在地を把握するためのマーケティングから着手した。大宮の初代監督、同ユース監督という過去の実績を誇ることなく、「自分は女子サッカーの新米指導者」という立場から、女子サッカーそのものを理解することからはじめた。

 世界をリードする米国などの特徴を分析し、「巧みにボールを操れるボランチはいない。前線からプレスを掛けて、相手ボランチにボールが入るように誘導して、奪う」という結論を得た。それが、後に世界一を獲得するなでしこジャパンの原点となった。

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