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欧州5大リーグで成功するために必要なこと~フランス・リーグアン編~

『現地記者が分析する欧州リーグにおける日本人選手の適応条件』
今では多くの日本人選手が海を渡り、海外リーグへ挑戦するようになった。日本とは違う環境で成功するためには一体どんなことが必要なのだろうか? 欧州各国に滞在する現地記者が、欧州リーグで活躍するための適応条件を探った。今回はフランス・リーグアン編をお届けする。

text by 小川由紀子 photo by Kenzaburo Matsuoka


長くフランスでプレーした松井大輔【写真:松岡健三郎】

過去所属選手:廣山望【03-04/モンペリエ】、松井大輔【04-08/ル・マン、08-09/サンテティエンヌ、09-11/グルノーブル、11-12/ディジョン】、中田浩二【05-06/マルセイユ】、大黒将志【06/グルノーブル】、伊藤翔【06-10/グルノーブル】、稲本潤一【09-10/レンヌ】、梅崎司【07/グルノーブル(大分トリニータからの期限付き)】

現在所属選手:なし

リーグ・アン(フランス)

労働条件:代表戦出場数などの条件は特になし。

外国人枠:登録は4人まで。試合に出場する人数には制限なし。ただしフランスは、アフリカ大陸の選手はコトノー条約により外国人枠とはみなさず、南米の選手はEU所属国との二重国籍者が多いため、「外国人枠」はわりと門戸が広い。

言葉:フランス語を覚えることがベスト。選手同士やフィジカルトレーナー、セクレタリーといったクラブスタッフには英語はあまり通じない。

人種差別:フランスはアフリカ大陸に多くの植民地を抱えていたことから、特に都市部では日常の生活環境の中にもアフリカ系民族が多く、表立った人種差別はないが、外国人自体が少ない地方では、差別的な空気が感じられることもある。アジア人選手はまだ希少なため、逆に「人種差別」の対象にはなっていないが、アジアのサッカー自体への評価が低いので選手個人の実力に懐疑的な視線が向けられがち。

フランスリーグでは、サッカーは個人競技

「フランスリーグでやれればどこでもやれる」と日本人選手を扱うとある代理人が口にしたほど、このリーグには独特の難しさがある。まず、どのスタジアムへ行ってもグラウンドの状態が悪く、日本人選手が得意とするところの細かい足技やテクニックが発揮しにくい。

 また、かつてこのリーグに8年間所属した松井大輔が「サッカーは団体競技だと思っていたが、ここでは個人競技だった」と漏らしたように、自国選手たちには「連係」の意識が低く、個人技で勝負に出たがる者が多いため、これまで日本で培ってきた組織的なプレースタイルを根底から覆されることになる。

 しかし郷に入っては郷に従え。ここではそのスタイルの中でいかに自分を輝かせるかが肝になる。そのためには結果がすべて。攻撃手なら、ゴール、アシストといった目に見える手柄をあげ、一対一の勝負が多い守備では、これに打ち勝つ。またフィジカルコンタクトも強いため、当たり負けしないタフさも必要となる。

 このような日本人選手が持つ素質を生かせる場とは真逆の環境に身を置くことで、どんなスタイルにも適応できるオールラウンダーに成長できる可能性も秘められている。ここは言わば叩き台のリーグだ。

【了】

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