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長友佑都 11年前

万全の状態ではない長友が先発出場した理由

text by 神尾光臣 photo by Kazuhito Yamada

ストラマッチョーニ監督「ユウトはリーグで最も優秀なアウトサイドの1人」

 インテルの最終ラインは3枚で、3トップのローマに対しては人数が同数になる。左FWにいるトッティにボールが入った場合は右のラノッキアが付くのだが、実質上トップ下の選手のようにチャンスを作るトッティは外に張らず、中にも絞って中盤にも下がる。

 そうやって敵を引き寄せ、サイドのスペースを活用することがローマの狙いだが、そこを長友がカバーし切れていなかったのだ。MFを見て中に絞ると、今度はSBにオーバーラップを許すという始末。

 昨年の終わり頃はもう少し連動性はあったから、試合勘の問題も大きかったのだろう。サイドでの不利を見て、ストラマッチョーニ監督は後半4バックに修正、長友も下がってサイドのスペースを埋めた。ただそのすぐあとに、本人は”タイムアップ”を迎えることになる。

 攻撃もあまりリズムに乗れてはいない印象だった。カットインからのシュートが一本。周囲をパスで走らせ、ゲームメイクに参加しようという意識の高さはあったが、スビードに乗って右サイドを縦に破るプレーはなかった。

 インテルの同点弾につながるグアリンの縦突破は、冷静に中のスペースを見て中央へ出した長友のパスから始まってはいる。ただ、その後強引に縦を破ったのはグアリンの手柄で、さすがに起点を作ったとは言いづらい。いずれにせよ周囲との連係も含めて、ちょっとブランクが響いているのだろう。

 以上、復帰戦は今一歩という内容。地元紙にも「さすがに試合から遠ざかっていたことが響いている」と表したところもあった。ただ100%ではないにも関わらず、長友がローマ戦で先発起用をさせてもらったのは、信頼の高さの証とも言える。

 試合の前日、ストラマッチョーニ監督は「ユウトはこの4ヶ月で、リーグの中で最も優秀なアウトサイドの1人に成長した」と語っていた。長友本人も言うとおり「焦らず復調して」いけばいいのではないだろうか。

【了】

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