フットボールチャンネル

長友佑都 11年前

右サイド・長友佑都に求められる仕掛けの意識

text by 神尾光臣 photo by Kazuhito Yamada

チームに貢献できなかった長友。今後の課題は?

 そんな彼に対し、観客のフラストレーションも増す。すでに試合の雲行きが怪しくなっていたからだ。前半23分にはグアリンがあろうことかゴール前でボールをロストし、これをFWメッジョリーニに決められて同点。

 さらに後半8分には、途中から故障のキブに代わって出場したペレイラがチェルチにあっさりと抜かれる。彼のクロスはメッジョリーニへと繋がり、インテルは逆転を許した。

 そして長友は後半9分、カンビアッソの投入と戦術変更に伴い、右サイドへポジション変更を命じられる。ところが長友は、左の時にも増してチャンスを作れなくなった。サネッティを前に出すためにサイドバックに入れられたが、オーバーラップのチャンスもそれなりにあった。

 上がってボールを受けても、クロスで完結するところまで行かない。タメを作れるカッサーノとの絡みが少なかったせいもあるだろうが、走り込んでも相手を抜けきれず、スローダウン。

 そして1対1を仕掛ければ相手をかわせず、攻撃はさらに停滞し、結局バックパスを選択する。時には抜けないままで、ボールロストにつながることもあった。チームはサネッティの右突破、そしてアシストから同点に持ち込んだ。

 その意味では後方のカバーに回っていた長友は、戦術的な役目を果たしたとは言える。しかしチャンスの時に仕事ができなかったのはいただけなかった。

 左は、今後一層の練習とコンディションアップが図られれば精度も戻るだろう。問題は右でのプレイだ。故障する前も右でプレイする機会は少なく、左でのカットインのような仕掛けの形を持っていたわけではなかった。

 サイドの駆け引きが上手く行かなければ、周りにボールを預けて中へと走り込みFW然にシュートを狙うという奥の手も彼にはあるのだが、パスは来なかった。利き足の使える右でならばアーリークロスにも挑戦し、仕掛けの選択肢を増やして欲しいところだ。

 3位のラツィオが負けたタイミングで、インテルはその差を詰められなかった。ファンが求めているのは常に勝利だ。それに直結する仕事の重要さと、たとえ状態が100%でなくても十分な貢献が出来なかったことは、彼自身が一番悔しく思っているはず。辛めのレビューになってしまったが、長友の更なるレベルアップに期待したい。

【了】

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top