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日本代表 11年前

ザッケローニの3-4-3は日本の武器になり得るのか?(第1回)

text by 河治良幸 photo by Kenzaburo Matsuoka

攻撃志向の3トップ 2人のワイドと2人のシャドー


3-4-3の場合、左利きの本田圭佑をザッケローニは右ウィングに置く。逆足だが、カットインや中盤とのパス交換を活発にするためだ。【写真:松岡健三郎】

 その3バックの中でも、3-4-3は基本的に攻撃志向の強いフォーメーションとして認識されている。現代において3バックと3トップを併用するというのは、守備のリスクを冒す代わりに前線を厚くする行為に他ならないからだ。

 もともと3トップは、50年代に流行した4-2-4からFWを1人減らし、中盤を厚くする意図から普及したもの。つまり4-3-3が新たな主流となった訳だが、より中盤の重要性が認識されるようになると、更にFWを1人削って4-4-2とする傾向が強まった。こうして2トップが大半のチームで採用されたことで台頭したのが3バックなのだが、86年W杯のデンマークなどに見られる3-5-2が中盤をより厚くしたのに対し、3トップは4人の中盤を維持しながら、前に3人のFWを置く、当時においても野心的な意図が込められた形だった。

 3トップにも様々なスタイルが存在する。最もクラシカルなのが、中央に1人のFWを置き、残る2人をワイドに張らせる形だ。ウィングの基本的な役割は縦を突破してのクロスだが、最近はドリブルで中に切れ込むプレーもよく求められる。これはサイドアタックに対する守備戦術が成熟したことや、ゾーンディフェンスが普及した事にも強く関係している。

 ゾーンの4バックの場合、サイドから中に入って行く選手をサイドバックがそのまま付いて行かず、中央に受け渡すのが基本。だが、サイドから横方向に速いドリブルを仕掛けられると、中央の守備者が瞬時に付きにくい。そこで生じるマークのズレ、あるいは守備連携のギャップを突き、危険なシュートやラストパスに持ち込むのだ。

 ザッケローニや3-4-3の信奉者とされるインテル・ミラノのガスペッリーニ監督も、基本的にワイドに2人のFWを張らせた3トップを用いる。これは前線に人数を増やすと同時に、連動性の高いサイド攻撃を実現するためだ。ザッケローニが右ウィングに左利きの本田圭佑、左ウィングに右利きの香川真司や岡崎慎司を配置するのは、中央へのカットイン、あるいは状況に応じた中盤とのパス交換など、多角的な攻撃を実現するための応用なのだ。

【第2回へ続く】

初出:サッカー批評issue52

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