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日本代表 11年前

ザッケローニの3-4-3は日本の武器になり得るのか?(第2回)

text by 河治良幸 photo by Kazuhito Yamada

クライフの3-4-3を発展させたザッケローニとビエルサ

クライフのバルセロナ 中盤ダイヤ型3-4-3


クライフの3-4-3 は多角的にパスを回すのに適した中盤ダイヤ型。ウィングはサイドの高い位置で起点となり、鋭いカットインでフィニッシュに絡んだ。圧倒的にボールを支配する超攻撃的なマインドから成り立っていた。

 3-4-3はよく“ピッチを広く使うことを意識したフォーメーション”と表現される。それには70年代にリヌス・ミケルスが掲げた“トータルフットボール”の哲学が影響しており、3-4-3自体はその流れを汲むオランダの強豪クラブの一部でも使われていたが、国際的なセンセーショナルを生んだのが90年代前半のバルセロナだ。

 当時のヨハン・クライフ監督は2トップが主流の中、ディフェンスラインを3人に託し、FWを3人に増やした。中盤は“ロンボ”と言われるダイヤ形で、多角的なパスを回すのに適している。ウィングの2人はサイドの高い位置で起点になりながら、鋭いカットインでフィニッシュに絡んだ。3バックの選手はできるだけラインを押し上げ、中盤とのコンパクトな距離感を維持しながら、サイドをカバーした。

 そうした高い守備意識がベースにあるとはいえ、彼らのシステムは圧倒的なボール支配と、4点取られても5点取るという超攻撃的なマインドから成り立っている。カウンター戦術が高度に発達した現在において、主要リーグでこの3-4-3をメインに採用するクラブは見当たらない。

 だが、当時のバルセロナは“ドリーム・チーム(El Dream Team)”として語り継がれ、攻撃的なサッカーを標榜する監督は攻守のバランスが求められる現代サッカーの中で、少しでもそれに近付くための努力を続けている。

ザッケローニのウディネーゼ 中盤フラット型3-4-3


ザッケローニの3-4-3 は同じサイドのウィングやサイドハーフ、セントラルMF が絡み、厚みのある攻撃をしかける。ただし、豊富な運動量を求められるため、後に指揮するミランでは司令塔を置く3-4-1-2 にシフトした。

 この3-4-3に堅守速攻の概念を加えたのが、ザッケローニの中盤フラット型3-4-3チリ代表前監督マルセロ・ビエルサ(現アスレティック・ビルバオ)の3-3-1-3だ。95年からウディネーゼを率いたザッケローニは3-4-3をダイナミックに操り、プロビンチャ(地方の小クラブ)を躍進させた。

 クライフのバルセロナと異なるのは、シンプルで素早い展開から、徹底してサイドに起点を作る効率的なスタイルだ。中央のMFが横に並ぶメリットを活かし、同サイドのウィングとサイドハーフ、セントラルMFが絡む、厚みのあるサイドアタックを実現した。この3-4-3は98-99シーズンのセリエAで優勝したミランに継承された。

 ただ個人能力に優れた選手が揃うものの、主力に本職のウィングがおらず、後にザッケローニが語るところでは、運動量も彼が求めるレベルに達していなかった。そのためディフェンスラインをやや深く取り、前線は3人のストライカーを並べ、更にはテクニカルな司令塔をトップ下に置く事実上の3-4-2-1にシフト。サイドの厚みは失われたが、中央に起点ができやすく、テクニカルな選手の存在も相まって攻撃のバリエーションは多彩だった。

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