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日本代表 11年前

ザッケローニの3-4-3は日本の武器になり得るのか?(第3回)

text by 河治良幸 photo by Kenzaburo Matsuoka

ボール支配が必須の4-2-3-1

 4-2-3-1は中盤で数的優位を作りやすく、サイドとセンターの両方に攻撃の起点を作ることが可能だ。そしてDFラインに4人の選手を配しているという4バックに共通する守備のメリットもある。ただし、この4-2-3-1が攻撃でも守備でも厚みを出すためには、ボールを支配している必要がある。

 つまりSBの攻撃参加とウィングの守備参加が、その支配率によって大きく影響されるのだ。ボールを支配できていれば、DFラインを押し上げながらSBが高い位置で攻撃に絡むことができる。2011年10月のタジキスタン戦で駒野友一や長友佑都が頻繁にライン際を駆け上がり、クロスを上げられたのはそのためだ。

 攻撃の時間が長いということは、それだけ守備の時間が短いということでもあり、全体がコンパクトであるということは、その中で1人ひとりの守備範囲を限定できることでもある。4-2-3-1は構造上、ウィングとSBの間にスペースが存在するが、主導権を握れていれば、両者の距離をコンパクトにして数的優位を作っていけるのだ。逆にそれができなければ、相手にボールを持たれる中でSBは縦に上がれなくなる。

 本来DFラインの構成員である彼らが、その状態で無理に上がっていけば、それだけ守備のリスクが増大するからだ。また守備の時間が長くなり、全体が間延びすればウィングは守備の負担が大きくなり、高い位置でボールを持ったとしても個人での勝負を求められる。欧州ではDFラインとボランチを守備、前の4人を攻撃と分けてしまう“攻守分業型”の4-2-3-1も見かけるが、それはザッケローニ監督が日本代表で目指すところではない。

数的優位のサイドがカギになる 3-4-3

 一方の3-4-3はDFラインを3枚とする代わりに、中盤の両サイドに選手を配することで、攻守に渡りサイドに数的優位を作りだすことができる。言い換えればサイドをうまく活用していかなければ意味を成さない形だ。同じ3-4-3でも今季のバルセロナがオプションとして用いている中盤をダイヤモンドにしたそれは、彼らが普段から用いる4-3-3に増してボールを支配することを目的としているが、ザッケローニ監督が掲げる中盤がフラットな3-4-3はより効果的なサイドアタックとサイドプレスを機能させるためのもの。

 CBを3人に増やす代わりに、SBの選手を中盤に引き上げ、そこが常にサイドアタックの起点になり、更にはウィングの選手と近い距離で連動できる位置にポジションを取れている。しかも、3バックの左右の選手は斜め前方のSHにパスを出しやすく、背後からサポートすることもできる。4-2-3-1ではSBを高い位置まで駆け上がるために、ボールを支配することが必要だったが、3-4-3では常にその状態を作れていることになる。

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