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2013補強診断 11年前

2013シーズンのJリーグを占う。各クラブの戦力補強診断 ~鹿島アントラーズ編~

text by 編集部 photo by Kenzaburo Matsuoka

前線にタレントは揃った。ディフェンスラインが不安要素

 ヴァンフォーレ甲府から獲得したダヴィは、昨シーズンJ2の舞台で38試合・32得点と圧倒的なパフォーマンスを見せた。札幌、名古屋でも決定力の高さを存分に発揮していた選手であり、その能力に疑いの余地は無い。ただJ1で戦った最後のシーズンである2011年は、コンディションの調整が上手くいかず無得点に終わっているのも事実。また、鹿島の戦い方にすぐフィットできるかも不安の残る部分ではある。

 それでも、ダヴィの持つ高い決定力と一人で局面を打開できる突破力は大きな魅力で、彼の加入によって、鹿島のカウンターアタックがさらに対戦相手へ脅威を与えるものに進化する期待は高い。

 神戸から野沢が復帰したことも、鹿島のストロングポイントを取り戻すことに繋がるだろう。セットプレーのキッカーとして、直接ゴールを挙げるだけでなく、チームメイトのゴールを何度もアシストしてきた野沢の復帰は鹿島にとって大きなプラス材料だと言える。ボールポゼッションの面でもボールが収まり、周囲に落ち着きを与えられる選手だけに、京都から獲得した中村充孝や成長著しい大迫勇也らの若手アタッカーも、自分の力を発揮しやすい環境となる。


今季もチームを引っ張る小笠原満男【写真:松岡健三郎】

 ジュニーニョが残留したことも特筆すべきことだ。年齢を考えれば全盛期の働きを期待するのは難しいが、ベンチにジュニーニョが控えていることほど相手にとって嫌なことはない。また、ベテランの小笠原がシーズンを通してフルに働けるかという不安はあるものの、既に主力として貫禄すら感じさせる柴崎岳が中盤の軸となり、中盤から前線にかけてのメンバー構成は、期待を抱かせるだけの陣容になった。

 逆に少し不安を覚えるのが、ディフェンスラインの構成だ。新井場が抜け、愛媛から左サイドバックの前野貴徳を獲得して、人数的にはプラスマイナスゼロとなっているが、両サイドバックを高いレベルでこなすことのできた新井場の抜けた穴を埋めるのは簡単ではない。西と前野がサイドバックのファーストチョイスになるだろうが、バックアップメンバーに本職の選手がいないことも不安材料の一つだ。

 またセンターバックの陣容も不確定要素が多い。岩政大樹が軸となるのは間違いないが、ビルドアップに問題を抱えているのは長年の課題となっている。相棒の一人である中田浩二は長く負傷を抱え、高いパフォーマンスを継続して維持することが難しい。昨シーズンはセンターバックとして起用されることが多かった山村和也にしても、安定感のあるプレーを見せられたとは言い難いのが実情だ。

 2011年のU-17ワールドカップでベスト8進出の立役者となった、新加入の植田直通にも出場のチャンスはあるだろう。青木や昌子を含め適切な選手起用を行い、センターラインのディフェンスを安定化させることが、まずチームとして取り組むべき課題になると考えられる。

 チーム全体を見ると、攻撃的な役割を担う選手層には厚みを持つことができ、チームとしての方向性も明確となった。ディフェンスラインには若干の不安が残るが、トニーニョ・セレーゾ監督の手腕でどこまで手堅いサッカーを作り上げられるかが鍵になる。鹿島らしさを取り戻すことができれば、昨シーズンの11位から一気に覇権を奪回することも、十分に可能ではないだろうか。

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