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インタビュー『高橋秀人、サッカーを探求する』(前編)

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka

Jリーグのほうが、スペースの守り方がうまくない

[図2]大学とプロのゾーンの違い

高橋 Jリーグのほうが、スペースの守り方がうまくないんです。4-4-2で綺麗なゾーンを敷けているときでも、プロはサイドバックが前に出て人をつかみたがる傾向がある(図2)。出て行くことで背後のスペースが空いてしまう。ボールが出てからでいいのに。なので、大学のほうがゾーンの規律を守ってプレーできていると、そのときは思っていました。ところが、プロは1対1を明確にしないとスピードでやられちゃうんですよ。

 ゾーンを消していても、中村憲剛さんだったら、ピンポイントでパスを通せちゃう。パスの出し手と受け手に専門性の高い選手がいるので、明確にマークする必要もあるわけです。そういう理由でマンツーマン気味になっているのか、それとも大学ほど勤勉性がないのでゾーンができないのか。たぶん、その両方だと思うんですけど。

――セオリーは大事だけれども、それだけでは難しい局面もある。

高橋 どちらをとるかより、そのときの協力の仕方が戦術だと思うんです。ここ2シーズンのベガルタ仙台が強いのは、そういうところだと思います。

――というと?

高橋 味方が抜かれないと思っていても、セオリーどおりにボールの逆サイドの選手はしっかり絞っている。そして、チャレンジ&カバーを明確にしているんです。『オレ、出るよ』とチャレンジする選手が、手を上げてアプローチに行くんですよ。ここは1対1を明確にする部分です。それで、僕もやろうと思って手を上げてアプローチしたら、ポポヴィッチ監督に怒られました。『世界を見てみろ、声出して手を上げてアプローチするヤツなんかいないぞ』と(笑)。それでも、やったほうが明確になると思うんですけど……とは言えなかったですけど。

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