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サガン鳥栖・尹晶煥監督インタビュー ~根性という名の知性~

text by 荒木英喜 photo by Kenzaburo Matsuoka

監督と選手の対話 信頼関係が大切

――現役時代は韓国と日本で活躍し、韓国代表にも選ばれました。多くの監督のもとでプレーしてきて、いまに生かされている?

「監督としてのリーダーシップ、カリスマ性、選手をどうまとめるかなどを学べたのは良かったですね。練習内容に関しては、大きな違いはないと感じます。いろんな監督の下で、監督が望むものを選手にどう伝えたらいいのかを学ぶことができました」

――韓国と日本のサッカーにおける良さはどこで、チームに何を落とし込もうと思われていますか?

「身体的なパワーやスピードは韓国に分があると思います。日本の良さは選手の調和を重視している面だと感じます。韓国と日本の良さを織り交ぜるというか、練習法や時間の使い方は意識していますね。日本の指導者は練習時間の長い人が多く、韓国の指導者は短時間で負荷を高めた練習をする人の方が多い。また、韓国の指導者は権威的でもあります。私にもそうした面があるかもしれませんが、そうなるとウチの選手が付いて来ないと思うので、日本の選手たちが求める練習を意識しています。そうした意味では、鳥栖で現役を終え、鳥栖で指導者としてスタートしたことがプラスになっています」

――鳥栖はハードな練習を行っている印象がありますが。

「そう思われているのは、ちょっと不満ですね(笑)。実際にはそんなに長い練習はやっていませんよ。負荷の高い練習は15~20分くらいです。ハードだと思われるのは、シーズン前に行う早朝の山でのランニングや、それを含めた3部練習のイメージが強いからだと思います。でも、今年は山のランニング(290段の階段を含む朝日山を周回)は2回しかやっていません。3部練習には選手たちに規則正しい生活をしてもらう狙いがあります。『朝6時から練習する』と言えば、選手は必然的に早寝早起きになります。そうした意味では、結婚も歓迎です。生活が安定しますし、責任感も出てくるでしょうから」

 尹監督の言うように、鳥栖の練習時間はほとんどが試合と同じ約90分と決して長くない。そのなかで負荷の高いメニューと低いメニューを交互に組み合わせているため、ハードな練習は実質20分間くらいである。シーズンに入ると選手のコンディションを最優先して、さらに負荷を落とす。オフ明けの2部練習が、午前のみに変更されることも多い。韓国人監督というと、ハードな練習を選手に押し付けると思われるだろう。しかし、鳥栖で現役を終え、指導者としてスタートしたことで、尹監督は日本人選手がどんな練習を好み、どんな練習をすれば付いて来るのかを心得ている。

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