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なぜクリロナのドリブルにはキレがあり、メッシのドリブルは止められないのか?(前編)

text by 清水英斗 photo by Kazuhito Yamada

全身をバネのように使うC・ロナウド


ロナウドがドリブルで切り返すシーン。踏み込んだ足をバネのように使い、地面からの反発力で、逆方向へ鋭く跳び出す。

「C・ロナウドは全身を大きなバネのように使う。このバネの大きさが普通の選手とは違う。つま先立ちで、全身が“C”の字を描くようなアーチ型になり、体を縮めたところから、反発力で強いパワーを生み出す」

 例えば、ドリブルからボールを切り返すとき、C・ロナウドは踏み込んだ足がバネのようになって地面からの反発力を受け取り、逆方向へ鋭く跳び出す。この体の使い方がC・ロナウドのドリブルにキレを生み出している。典型的な剛性の選手の特徴だ。ただし、それにはデメリットもある。

 C・ロナウドが反発力を生み出す方向は、体を縮めた方向の逆側、すなわち一方向しかあり得ない。つまりC・ロナウドがバネを使うために体を縮めた瞬間を相手に見切られると、その後に跳び出す方向を読まれて、ボールを奪われてしまうことがあるのだ。C・ロナウドは突破力のある選手だが、プジョルなど一部の優れたDFには彼のドリブルが通用しないこともある。剛性の動きを読む力に長けたDFには、C・ロナウドはどうしても分が悪い。

 さらに吉澤氏は本田圭佑とC・ロナウドの違いにも言及する。

「本田も同じく剛性だが、C・ロナウドとはバネの大きさが違う。C・ロナウドが全身をバネのように使うのに対し、本田のバネは下半身のみ。だからC・ロナウドに比べると本田の切り返しは小さくて、より直線的な運動になっている。ただ、その代わりに本田は上半身が重りのようになっていて、重心に安定感があるのが特長。その力を生かせば、今後はシャビやイニエスタのような柔性としてのプレーを極める道もある」

 本田の場合は反発力だけでなく、重心の安定感を生かしたキープ力、すなわち『動かない力』も優れている。トップ下、ボランチ、FW、サイドなどさまざまなポジションを経験する本田だが、その動かない力を生かすことで今後どのような方向性で成長していくのか。まだ本田の最終形は見えていない。

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