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なぜクリロナのドリブルにはキレがあり、メッシのドリブルは止められないのか?(前編)

text by 清水英斗 photo by Kazuhito Yamada

U-23日本代表についての面白い指摘

 また、吉澤氏はU-23日本代表についても面白い指摘をしている。

「清武弘嗣の体の使い方は剛性タイプ。彼はフワッとしたパスや緩急を使い分けることはできず、いつも同じリズム感でプレーしている。清武の運動のリズム感はMFではなく、むしろFWタイプだ」

 この言葉を聞いて1つ思い出したことがある。U-23日本代表はアジア予選の頃から、ずっとゲームコントロールが不得手で、試合のリズムや緩急を作れない単調なチームだと批判されてきた。その原因の一端は、剛性の清武がゲームメーカーのように頻繁に中盤に下がってボールに触っていることにもあるのではないだろうか。

 清武は技術が高く、ワンツーなどで小気味良く突破することには長けているが、プレーのリズム自体は単調だ。もちろん一長一短はあるが、変幻自在のリズムでパスを操るA代表の遠藤保仁のような柔性タイプの選手がいれば、U-23日本代表はもう少し違う顔を見せたのではないかと考えられる。

50センチ動くたびに力の惰性をキャンセルするメッシ

 C・ロナウドとメッシの体の使い方は、根本的に質が異なる。

「反発力で勢いをプラスする剛性のC・ロナウドとは反対に、柔性のメッシは反発力をキャンセルしながらプレーする。メッシは少し移動するたびに、体が『ゼロ・ポジション』(360度どこにでも進めるニュートラルな体勢)に戻り、その頻度が普通の選手よりもはるかに多い。50センチ動くたびに力の惰性をキャンセルする感じ。だからメッシは自由自在に動きの方向を変えられる」

 メッシの場合は、50センチ移動とゼロ・ポジションを頻繁に繰り返すのが特徴的だ。では、それをどのような体の動きで実現しているのか?

「メッシは体幹の筋肉をコントロールしている。胸で小刻みにリズムを取っている感じ。胸と背骨の辺りを縮めたり伸ばしたりしながら、その反発力だけで行きたい方向へ行ける。普通の選手のステップとは考えないほうがいい。軸足と送り足の関係の場合は相手に進みたいコースを読まれてしまうが、メッシは上半身の力が主導して進むコースを決めている。軸足を踏ん張る必要がないので、予備動作が極めて小さい」

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