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【欧州の視点から】快適なスタジアムは自治体所有でも可能か?

text by 永田到 photo by Kenzaburo Matsuoka

自治体所有こそが実は最適の形態だ

 スイスに本部を持つ大手スポーツマネジメント会社「スポートファイブ」にて、チャンピオンズリーグのスタジアム運営を欧州各国で担当してきた責任者は、「自治体所有こそ最も素晴らしい形態だ」と力強く語る。

 スタジアムの建設・維持にかかるコストは莫大だ。規模にもよるが、建設費に数百億円、施設維持費に年間数億円、さらには固定資産税がのしかかる。こうした重荷をクラブが背負わなくとも、魅力的なスタジアムを作ることは充分可能、というのが彼の見解だ。

 例えばドイツは日本と同様、自治体所有のスタジアムが大半だ。ドイツでは、地域におけるスタジアムの存在意義が自治体に深く理解されていて、クラブの意見をスタジアム運営に取り入れることに極めて協力的だとのこと。そのため、自治体所有であっても、スタジアム運営の自由度や意思決定のスピードが損なわれる懸念は少ないという。

 日本では2011年のスポーツ基本法の施行により、自治体のスポーツ施設運営への主体的な関わりが求められている。

 今後クラブ所有に固執せず、①自治体所有形態でのノウハウの蓄積、②自治体との協力体制の強化、③継続的な設備投資の3本柱に注力すれば、クラブの経営状態を維持したままで、魅力的なスタジアム作りを実現していくことは充分可能と言えるだろう。

【了】

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