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【欧州の視点から】快適なスタジアムは自治体所有でも可能か?

text by 永田到 photo by Kenzaburo Matsuoka

 これまで、近隣ショッピングモールの拡張、最寄駅のリニューアル、携帯電話・wifiの通信環境整備等に積極的に投資。時流に応じて変化するスタジアム利用者のニーズに応えてきたことが、結果としてスタジアムの魅力向上につながったという。

 さらに、「地元アムステルダム市の象徴的な存在であり続けたい」と述べ、全ての地元住民に開かれた場所という意味で、「21世紀の教会」を目指す姿としている。自治体の経営関与については、「スタジアム運営の自由度を狭めるものではなく、自治体と調和を図りつつ、ともに発展していくという意味ではむしろ好ましい」というのがマーカーリンク氏の意見だ。

スタジアムをブランディングするウェンブリー

 2つ目はウェンブリー・スタジアム。ロンドン五輪でなでしこジャパンがアメリカと決勝を戦った、言わずと知れたサッカーの聖地だ。イングランドサッカー協会(FA)のグループ会社が所有権を持つウェンブリー・スタジアムは、次の方法でブランディングに注力をしている。

 1つ目はピッチのブランディングだ。全面積の3%に人工芝を取り入れ、テレビ放映時のピッチの緑色の見栄えが最高なものとなるようにしている。

 2つ目はスタジアムのブランディング。スタジアムロゴを作成し、PRに活用。スタジアム上部のアーチの形状をデザインに取り入れ、利用者の感動経験をさらに強調させている。

 3つ目はハイレベルな試合やイベントの積極的な誘致だ。サッカーではFAカップ決勝戦や13年のUEFAチャンピオンズリーグの決勝戦、それ以外ではビヨンセのライブ等、開催する試合やイベントをハイレベルなもののみに厳選して積極的に誘致している。

「ウェンブリーは素晴らしい経験と思い出が得られる場所」というイメージを能動的に創造している。ハイレベルな試合観戦を約束するだけではなく、聖地と呼ばれるにふさわしいブランディングを強く意識し、試合の記憶を観戦者の心に強烈に刻みつけているのだ。

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