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【欧州の視点から】快適なスタジアムは自治体所有でも可能か?

Jリーグではサッカー専用スタジアムの機運が高まっている。そのときよく聞かれるのが「クラブ所有のスタジアムこそが理想」という声だ。だが、果たしてそれは正しいのか。欧州の事例から問題提起する。

text by 永田到 photo by Kenzaburo Matsuoka

自治体所有に極めて近いアムステルダム・アレナ

 ガンバ大阪、サンフレッチェ広島、京都サンガ、ギラヴァンツ北九州。新スタジアム建設の構想がJクラブの間で続々と持ち上がっている。新国立競技場の建設と合わせ、近年のトレンドといっていいだろう。

 そんな中、魅力的なスタジアム作りには、クラブによるスタジアム所有の形態が理想だという声をよく耳にする。運営の自由度が増し、より魅力的な来場者サービスが実現する、というのが根拠だ。しかし現在、Jリーグでクラブ所有として知られているスタジアムは、日立柏サッカー場の1件に留まる(ヤマハスタジアムは親会社所有)。


Jクラブ所有スタジアム、日立柏サッカー場【写真:松岡健三郎】

 果たして、日本で大半を占める自治体所有のスタイルは、魅力的なスタジアム作りに不向きなのか。その疑問の答えを探るべく、スタジアム運営をテーマに開催されたイベント「World Sports Congress」をロンドンで取材した。

 このイベントでは、世界的に有名な2件のスタジアムの幹部がプレゼンテーションを行った。1つ目はオランダのアムステルダム・アレナ。アヤックスの本拠地として使用されるこのスタジアムは、UEFAから最高ランクの格付けを獲得している。しかし所有権はクラブにはない。アムステルダム市が48%を出資するスタディオン・アムステルダムCV社にあり、自治体所有に極めて近いのだ。

 特筆すべきなのは、2001年から11年までの10年間、常に純利益で黒字を出し続けている点だ。赤字を出し続け「ハコモノ行政」との批判も受ける日本の施設運営状況とは大きく異なる。CEOのヘンク・マーカーリンク氏は「常に黒字を出し続け、コンスタントに設備投資を重ねることが重要だ」と語る。

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