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驚異的なペースで得点を量産する“外国人”メッシ。彼はバルサの歴史を変えられるか?

text by 植田路生 photo by Kazuhito Yamada

1920年代に活躍した2人のフィリピン人

 まだアジア人蔑視が強く残っていた時代。アルカンタラのような選手は特殊な例だが、他競技に目を移せば、世界の舞台で活躍した人物がいないわけではない。その1人がパンチョ・ビラというボクサー(本名はフランシスコ・グィレド。リングネームはメキシコの独立運動家に因む)。

 アルカンタラと同じくフィリピン出身で、1923年にフライ級の世界王者になると、1925年までに4度防衛。アジア人初の世界チャンピオンでもあるという。実際に目にしたわけではなく、昔のボクシングマガジンのテキストで得た情報でしかないが、偉業であることは間違いない。

 1927年までバルサでプレーしたアルカンタラと1925年まで王者だったパンチョ・ビラ。活躍した時期もかぶる。フィリピンは1916年に自治権を獲得したものの、正式な独立は戦後。国が独立を目指しているある種の混乱期だからこそ、逆境を跳ね返す偉人が生まれたのかもしれない。

 ちなみに、アルカンタラが亡くなったのは67歳。引退後はスペイン代表監督も務めている。一方のパンチョ・ビラは享年23歳。親知らずを抜いてすぐに試合に出たところ破傷風になってそのまま命を落としてしまった(先日親知らずを抜いた私としては身の毛がよだつような話だ)。急死しなければマニー・パッキャオのように長く活躍していた可能性もある。

 異国の地で外国人選手が活躍するのは容易なことではない。今でこそ1つのチームに多くの国籍の選手がいることは普通になったが、それは先人たちが道を拓いたからだ。アルカンタラやパンチョ・ビラのような人物がいなければ、アルゼンチン人のメッシがすんなりとスペインで受け入れられなかっただろう。

 昨季だけで73ゴールをあげたメッシは早ければ来季にもアルカンタラの記録を抜く可能性がある。クラブ史を書き換えると共に、サッカー史に燦然と輝く功績を打ち立てることになるのだ。そのとき、開拓者である選手たちが再び讃えられることを願って止まない。

【了】

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