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好調スパーズを牽引する“モンスター”ギャレス・ベイルはメッシ、クリロナを超えられるか

text by 山中忍 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ベイルは“メガ・モンスター”になれるか

 しかし、前半のベイルは、シティ優勢のピッチ上で完全に消えていた。トップ下で先発したベイルは、中央に固執し過ぎた。2列目の両サイドが頻繁に中央に流れてきても、代わりに外に開こうとはしなかった。

 結果として、幅のないトッテナムの攻撃は、難なく敵に止められた。ベイルを以てしても、中央の「人混み」を突破することは困難だった。

 後半の変身には、4-2-3-1から4-3-3へとシステムを変更した、ビラス・ボアス采配が背景にあった。ベイルは右サイドを意識するように指示されたに違いない。アシストは、ペナルティエリアの淵から、右に流れてパスを要求したことによって生まれている。

 前半のベイルであれば、ゴール前中央への動きを念頭にパスを待っただろう。自身のゴールも、ハーフウェイライン付近かあら、相手左SBの外を回ってエリア内に侵入して決めたものだ。

「本領発揮なら無敵」とベイルを評したのは、トッテナム前監督のハリー・レドナップだが、その本領を一貫して発揮するためのノウハウ体得が今後の課題となる。メッシとロナウドは、その一貫性のレベルでベイルを凌ぐ。

 今季にしても、リーガでのメッシは29試合で43ゴール、ロナウドも31試合で31ゴールと、サポート陣の質に差があるとはいえ、ベイルに差をつけている。

 それでも、両者より若い23歳のベイルには、下は約70億円、上は140億円もの移籍金で、バルセロナ、レアル・マドリー、バイエルン・ミュンヘン、シティなどによる引抜きが噂される。

 だが、少なくとも来季は、トッテナム2年目のビラス・ボアスの下、戦況に応じて、ずば抜けた能力を生かすための「適所」を察知する術を磨くのが得策と思われる。そして、戦術眼に長けた指揮官のガイダンスを必用としなくなった時にこそ、”メガクラブ”への移籍で、世界最大級の「メガ・モンスター」へのステップアップに挑めばよい。

【了】

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