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金満オーナーの野望はやはり夢物語か PSG監督人事をめぐる“パリ狂想曲”

text by 小川由紀子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography / Ryota Harada

場当たり的な人事のツケを今後払わされることも

 34節のエビアン戦でベッカムらの退場処分が物議を醸した矢先、次戦のバランシエンヌ戦でも、ファウルを見逃されたことに抗議した主将のチアゴ・シウバが、主審に軽く「触れた」だけで即レッドカードを出されるという、誰もが唖然とする判定が下された。それらは強豪に対する過度な制裁、という域を超えてゲームの流れをねじ曲げ、試合そのものをつまらなくしてしまっている。

 この試合の後、アンチェロッティは「世界のどのリーグを見ても、最も高いポジションにいるチームは、最もカードが少ない、というのがスタンダードだ。しかしここではその例はあてはまらない」とやんわりフランスの審判について苦言を呈したが、リーグの質の低さを露呈するような出来事の連続に、選手ともども嫌気がさしても不思議ではない。

 これに対し、一時は「クビ」もチラつかせたオーナー側は、引き留めに必死になっている。なぜなら、彼に代わる後任候補がいないからだ。イブラヒモビッチやチアゴ・シウバ、ベッカムらがこのクラブへの移籍を決めたのには、過去ビッグイヤーを2度勝ち取った名将アンチェロッティの存在が大きかった。

 イブラの契約は、あと2季残っているが、「監督交代など、状況が変われば移籍もなくはない」と代理人のミーノ・ライオラはパリジャン紙に語り、すでにユベントスと話がついている、という噂さえ飛び交っている。

 彼だけでなく、来季の指揮官の人選によってはトッププレーヤーたちの一斉離脱もなくはない。彼に代わる人材としてカタール側が納得しそうなビッグネームと言えば、筆頭にくるのがモウリーニョだが、彼はチェルシーへの復帰がほぼ確実。

 あとはマンチーニかベンゲルが契約途中で鞍替えしてくれるのを祈るしかない。

 リーグタイトルを置き土産にお役目を果たして去る、というのが、アンチェロッティの目論みか。レオナルドは今頃、後任探しに必死になっているに違いない。

【了】

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