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Jリーグ 11年前

キーマンが描く20シーズン目の航海図 ~改革の先にある10年後のJリーグとは?~(後編)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

「共存」と「競争」のバランス

 一番わかりやすいのが、ACLの出場枠です。日本は4をキープ。カタールも4、韓国が3+プレーオフ、中国が2+プレーオフ。Jリーグが高いレベルをキープしているからこそ、日本はACLで4枠を確保できている。

 もちろん、いきなりアジアとか世界とか、ウチは関係ないよというクラブも、今はあると思います。でも、リーグのクオリティというのは、一部のクラブが優れていれば、それでいいというわけではないですよね。共存共栄、同じJのマークを付けたクラブというのは、たった40しかない大切な仲間ですよ。

 これがドイツなら、1クラブが経営破綻で(下部リーグに)落ちても、上がってくるクラブは無数にありますよね。でもJはまだ40しかない。そういう意味では、ドライに「あそこが落ちてもここが上がってくるからいい」とかいう話ではないと思います。

 そうなると、やはり(ライセンス制度の)運用が大事になってくる。リーグをデザインする場合、「共存」の部分のほかに「競争」の部分がありますよね。資本主義社会では、コンペティションがあることで良いものが生まれる。結果、日本のサッカーが強くなるという側面がある。

 ただし、時代によって「共存」を強くしないといけない時と、「競争」を強くしないといけない時があって、どっちかが絶対ということはないと思います。それぞれのリーグの成長のフェイズに応じて、どちらを厚くするか。それを決めていくのが、経営のあり方だと思うんですよ。

 先ほどから例に出ている、ブンデスにしてもプレミアにしても、いずれも過去の厳しい局面を乗り越えているんですよね。ブンデスの場合、共存の側面が強くなりすぎて、CLで勝てないことに不満を持つビッグクラブの存在があった。

 プレミアにしても、それ以前の92年くらいは「イングランドのリーグはどうなるんだろう」という雰囲気があった。でも、それぞれがそれぞれの問題を克服することで、今では立派なリーグになっている。われわれも、自分たちの問題を、どう克服していくか、ということだと思います。

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