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Jリーグ 11年前

キーマンが描く20シーズン目の航海図 ~改革の先にある10年後のJリーグとは?~(後編)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

アジアの中でもJリーグは注目されている

 実はアジアの中でも、Jリーグはこのところ注目されていて、去年ものすごい数のリーグが、Jリーグの視察に訪れているんですね。カタール、マレーシア、タイ、中国、インド、韓国、ベトナム。それくらいの数のリーグが、Jリーグを勉強させてほしいと。アジアのサッカー関係者の間では、ちょっとしたJリーグブームです(笑)。

 彼らは「ビフォア93」「アフター93」と呼んでいるんですが、(Jリーグが開幕した) 93年が分水嶺だったと認識しています。つまりプロリーグの発展が、その国のナショナルチームの力を押し上げ、サッカー人気も押し上げたと。で、彼らはそのノウハウをシェアしてほしいというわけです。

 おそらく彼らは、すぐにはプレミアリーグになれないから、まずはJリーグを参考にしようとしているようです。それは非常に誇らしいことです。でも、だからと言って、今のJリーグがプレミアリーグと競争してもダメですよ(笑)。UEFAとAFCの価値が、経済的に接近してこないと。

 グローバル化は、善でも悪でもなく、適応すべきものだと僕は思っています。グローバル化の波の中、どうやってJリーグの価値を高めていくのかというのは、決め過ぎるといけない。もちろん大きな方向性は必要だし、そこは今、示しているところです。グローバルのほうに行くし、アジアにも行きますよ、と。でも、アジアの経済成長がどういうスピードで進むかはわからない。

 2年後、ヨーロッパがダメになってアジアが一気に世界経済の中心になるのか、あるいはゆっくり進むのか、もしかしたら何も起こらないかもしれない。ただ(どんな状況になっても)適応しなければならない。時代に適応できたプレミアは成功し、そうでなかったイタリアは失敗した。両方とも、志はあったと思うんです。結局、強い者が生き残るのではなく、適応した者が生き残るわけです。その意味で、プロリーグは他の産業と一緒なんですね。

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