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古豪ソシエダ10年振りのCL出場もあるか? 復活のカギはクラブの命運を懸けた“原点回帰”

text by 山本美智子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

育成重視への原点回帰と際立つ監督の手腕

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現在もバスク純血主義を貫くビルバオ【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 もともと、スペイン国内では、バスク地方のチーム(アスレティック・デ・ビルバオ及びレアル・ソシエダ)が行う育成には定評があった。ビルバオは、今でも純血主義を貫いており、チームはバスク人のみで構成されているが、ソシエダにもビルバオと同じ歴史があり、1980年代後半までは外国人選手を一切、起用していなかった。

 そのため、スペイン代表にしても、外国人のスター選手を獲得することが多いビッグチームではなく、ビルバオやソシエダの選手を軸にするのが常だった。80年代にソシエダは、リーグ優勝、国王杯、スペインスーパー杯などを制覇し、栄光の時代を築いているが、その当時の選手は、殆どが下から育ってきた選手で占められていたのだ。

 そして現在、再び歴史が繰り返されている。ソシエダは、スタメン11人のうち、8人までをスビエタ育ちの選手で占めるまでに至っており、ヨーロッパの中でも、最も優秀な育成を行っていると高評価を受けている。

 国内のバルセロナやレアル・マドリーはもちろん、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムなどのプレミアム勢、ユベントス、ミランなどイタリアのクラブも、スビエタまでスカウトマンを送り込んでおり、業界内での信頼度は抜群だ。

 ソシエダは経済面からも、選手育成に投資することを決めたが、それが強く促進されたのは、2011年にやってきたフランス人監督、フィリップ・モンタニエルの存在ゆえだ。モンタニエルはやってきた当初、トップチームで練習していなかったユースの選手をいきなり抜擢し、スタメンに据えた。

 誰も知らなかったイニゴ・マルティネスをディフェンスの中心に据え、9番のポジションにイマノル・アギレチェを置いた。誰もが、モンタニエルをまるで他の惑星からやってきた意思の疎通ができない人物なのでは、という目で見たが、2年が経過した今、その慧眼には感服するしかない。

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