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複雑に絡み合う2つの“電撃移籍”。ゲッツェのCL決勝欠場に見え隠れするペップの影

text by ブックマン二郎 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

グアルディオラ招聘が与えた大きな影響とは?

 バイエルンは昔から同じリーグのライバルチームから選手を獲得し、相対的に競争力を高めてきた。ゲッツェも同様のパターンだ。3700万ユーロを払い、来季の目玉選手を獲得した。

 だが、今回はそれ以外の要素も含まれている。それは、来季からバイエルンの指揮を執るグアルディオラにある。スペイン人指揮官はゲッツェの獲得を熱望していた。

 これまで、オファーのあったクラブの中でもっとも条件提示の低かったバイエルンをペップが選択した理由として「仕事のしやすさ」「自身のプレースタイルに似ているハビ・マルティネスの存在」などがあげられていたが、その一番目が“ゲッツェ獲得”にあったことは十分に考えられる。

 ゲッツェはユースこそドルトムントだが、バイエルン州の出身。子どもの頃からバイエルンのファンだった。憧れのクラブでプレーしたい気持ちがあるのは当然だ。そして、ペップの一番の希望を叶えてくれるクラブ、それがバイエルンだったわけだ。

 さらに言えば、ペップのラブコールを聞くと、ゲッツェの心は完全にグアルディオラとプレーすることに向いてしまったという。バルセロナであれだけ魅力的なフットボールを実現させた監督と共に仕事をしたい――いわゆる相思相愛になった。

 この電撃的な移籍劇が起こったのが、愛のためか、金のためか、と聞かれれば私は「愛だ」と答える。バイエルン、グアルディオラ、ゲッツェの三者が強烈な愛を成就させたのだ。ドルトムントの愛は届かなかった。人間とはより大きな愛を感じる方へ吸い寄せられるものだ。

 レアル・マドリー戦でハムストリングを負傷して以降、満足にプレーできていないゲッツェ。一向に治らず、CL決勝も欠場するという。果たしてそこまで重傷だったのか。そこは本人のみぞ知る領域だが、私はこう思う。

 負傷はゲッツェにとって、バイエルン戦を欠場するためのいい口実になったのではないか。重傷や軽傷か、ケガの度合いに関わらず。なぜなら、愛するクラブを打ち負かすためにプレーすることなど、できないのだから。

【了】

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