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ブラジル時代のカズを追って ~サッカー王国での7年半を知る人々の回想録~(後編)

text by 沢田啓明 photo by Hiroaki Sawada

「ブラジル人の日本人選手に対する固定観念を覆した」――評論家ジュッカ・キフーリ

 コリチーバで結果を残したことが認められ、1990年2月、かつて出番がもらえず一度は退団したサントスに復帰した。

 サンパウロ州リーグに出場し、4月29日の強豪パルメイラスとの試合で1得点1アシストの大活躍。さらに、5月5日のグアラニー戦でも決勝点をあげた。

 評論家のジュッカ・キフーリ氏はこう語る。

「86年とはちがって、カズは試合経験を積み、本物のプロ選手になっていた。サントスでも、実力でレギュラー・ポジションを掴み取った。彼の活躍で、『日本人はサッカーが下手』というブラジル人の固定観念が覆された」

 サントスとの契約は7月末まで。その後、日本へ帰国して読売クラブに入団することが決まっていた。帰国直前のラストゲームでは、腕にキャプテン・マークを巻いてプレーした。サントスからカズへのオマージュだった。

 試合後、スタンドへ向かって両手を掲げるカズに対して大きなカズ・コールが起きた。それは、7年半に渡る苦闘の末、小柄で痩せた少年が「本物のプロ」になったことの確かな証だった。

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