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国歌斉唱にみるブラジルの“本気度”

コンフェデのブラジルの試合を見て、なにか普通とは違うことを感じなかっただろうか? 試合前の国歌斉唱だ。伴奏が終わっても観客、選手たちもが続きを歌うのだ。それはなぜなのか? 『フットボールde国歌大合唱!』(東邦出版)の著者がその理由に迫る。

text by いとうやまね photo by Kenzaburo Matsuoka

終わらない国歌斉唱

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ブラジルの国歌斉唱に異変が起きている【写真:松岡健三郎】

 ブラジルの国歌斉唱に異変が起きている。今月16日から開催されているコンフェデレーションズカップでのことだ。試合開始前の国歌斉唱で、ブラジル国歌が終わらないのだ。

 サッカーの代表戦では、試合前に一分程度の国歌斉唱が行われる。たいていは、会場に伴奏のテープが流され、選手やファンがそれに唱和する。

 ブラジル国歌は長いので、通常は短縮された伴奏が流され、途中でフェードアウトする。普通ならそこで国歌斉唱は終了となる。

 だが、今回の大会では様子が違った。ブラジル国歌の伴奏が終わっても、スタンドの客や選手までもが無伴奏で歌い続け、最後まで歌い切るという現象が起きている。

 日本戦の時はさほどではなかったが、2試合目のメキシコ戦から顕著になっていった。国歌の伴奏が終わった後も、客席は手拍子をし、延々と歌い続けた。選手たちもそれに呼応するかのように肩を組んだまま斉唱を続けたのだ。世界の国歌斉唱において実に珍しい光景だ。

 この試合を裁いたのは、名審判として名高い英国人のハワード・ウェッブ氏だった。彼は今回この国歌斉唱に感動した一人だった。試合後、スコラーリ監督に「このようなことは、未だかつて見たことがない。音楽が止まっても、人々が歌い続けるなんて、とても感動的だった」と、心の内を告白している。

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