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国歌斉唱にみるブラジルの“本気度”

text by いとうやまね photo by Kenzaburo Matsuoka

ブラジルがどうしても負けられない理由

 ブラジルはワールドカップで5度の優勝を果たしている。もちろん世界最多だ。ただし、自国で優勝を遂げた経験はない。

 過去W杯で優勝した国は8つあるが、自国で優勝していないのは、スペインとブラジルだけだ。

 ブラジルには64年前の苦い思い出がある。1950年ブラジルW杯でのことだ。地元開催のブラジルは、全国民の期待を担って優勝目前まで迫っていた。

 当時W杯は、総当たりのリーグ戦形式で行われていた。最終戦を前に、ブラジルはトップを走り、最後の試合で引き分けさえすれば、優勝できるはずだった。

 最終戦の舞台となったマラカナンスタジアムは、20万の観客で埋まった。ブラジルは先制点を挙げるものの、その後逆転を許し、目前でウルグアイに優勝をさらわれてしまう。優勝を逃したブラジル国民の失望は大きく、自殺やショック死など複数の死者を出したと言われている。いわゆるマラカナンの悲劇だ。

 それから半世紀。ブラジルは自国でのW杯優勝の機会を得た。ブラジル国民の期待は最高潮に達しようとしている。その意気込みの一端が、先の国歌斉唱に現れている。

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