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スペインとの“前哨戦”を制したブラジル。コンフェデで見せた王国の真価

text by 下薗昌記 photo by Kenzaburo Matsuoka

巧みな統率力を見せたスコラーリ監督

「スペインに勝つためにはスペースを消さなければいけなかった」(パウリーニョ)。

 イニエスタとシャビをブラジルの守備の要、パウリーニョとルイス・グスターヴォが徹底マークし、パスワークの輝きを鈍らせたのは紛れもない事実だが、差し引かなければいけないのがあくまでも今大会はW杯の前哨戦ということだ。

 まだコンフェデ杯のタイトルを手にしていなかった前日の記者会見で、スコラーリ監督はどこか余裕たっぷりの表情だった。2月の就任以降、低調だったその戦いぶりはコンフェデ杯に入ってから一転する。

 イタリアやウルグアイを下してスペインへの挑戦権を得た段階で、今大会のノルマは果たしたも同然。

「スペインにはいくつかのアドバンテージがあるが、我々は大切な別のアドバンテージを持っている。それはサポーターからの信頼を再び得た事だ」とスコラーリ監督も語る。

 コンフェデ杯の優勝が、翌年の成功につながらないことは過去3大会のブラジルを見ても明らかだが、スコラーリ監督が得た白紙の委任状が今大会の最大の収穫だ。

 王国の指揮官は言う。「コンフェデ杯の制覇で我々が2014年に世界タイトルを取れるチームを作っていることをサポーターに信じてもらえた」

 自らが抜擢したルイス・グスターヴォがフィットし、大会前はゴールに見放されていたネイマールも再覚醒。優勝後の会見で「偉大な選手たちに扉は常に開かれている」と本大会の重圧に耐えうるカカーやロナウジーニョらの招集にも含みを持たせた指揮官は、コンフェデ杯のメンバーをベースに攻守における課題を突き詰めることになる。

 1950年大会には果たせなかった自国開催でのW杯制覇に向けて、ブラジルは有力な優勝候補であることを世界中に印象づけた。

【了】

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