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伊在住記者が警鐘「『パスサッカー』なる表面的な言葉が流布する日本サッカーは思考停止である」

text by 宮崎隆司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Kenzaburo Matsuoka

なぜおかしな言い回しが広まったのか?

 言うまでもなく、サッカーはパス無くして成立し得ない競技なのだから、その基本中の基本をチームのスタイルを表す冠とすることに無理がある。そう言えるのではないだろうか。

 剣道を例にとれば、『面剣道』とか『篭手剣道』、『胴剣道』などという言い回しは絶対にありえないと旧知の剣の達人(引き篭手の名人)は語ったが、多くのサッカー専門家は、およそ『メンケンドー』にも等しい『パスサッカー』に疑問を呈すどころかむしろ積極的に使われている。

『伝統のパスサッカー』とか、『カテナチオからパスサッカーへ(の華麗なる変貌)』、『パスサッカーを極める』などなど。数え上げればきりがない。

 したがって育成の現場でも監督さんたちはこう言っては胸を張るのである。「ウチは一貫してパスサッカーですから」と。

 昨今の風潮である「分かり易さ」を過度に追求するがゆえに「便宜上」考案されては流布され浸透した言葉なのだろうが、つい先頃(今冬に一時帰国した際に重ねた取材の中で)、件の監督さんにこう問うてみたら途端に彼は返答に窮していた。

「では、そのパスサッカーが封じられたらどう対処なさるのですか?」

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