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連載コラム 11年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。衰えた“怪物”ロナウドはなぜ月収9000万円の契約を結べたのか?

オリベイラを驚かせたエピソードとは

 話をロナウドに戻そう。

 ロナウドは94年W杯の後、96年アトランタ五輪、98年、2002年、2006年W杯に出場している。2002年大会では得点王となった。

 ロナウドの特徴は180センチを越える身体がありながら、ヘディングでの得点が少ないことだ。彼を映し出す映像は、ゴールを向いてドリブルする姿が多い。この形を相手ディフェンダーが警戒しているにもかかわらず、だ。ボールを受けるポジショニングが非常に巧みな、頭脳的な選手なのだ。

 かつてのロナウドはバルセロナFC時代にしばしば見せたように、ディフェンダーをなぎ倒していくような力強い選手だった。ブラジルでは、しばしば「シュートを知っている」という言い回しを使う。頭を使い、緩急、あるいは技で得点を決めることがブラジル人を評価する。

 彼がブラジル人が認める、ストライカーになったのは、99年末に右膝靱帯断裂の大怪我を負ってからである。力ではなく、間合い、技で得点を決めるようになったのだ。

 鹿島アントラーズの監督を務めていたオズワルド・オリベイラとロナウドについて話したことがある。

 ある時、ロナウドとオリベイラは一緒にフットサルをしたという。仲間の一人が偶然、ロナウドの股を抜いた。股抜きされるのは、屈辱である。ロナウドは引きつった笑い顔で、こう宣言した。

「これから、君の股間を5回抜いてみせる」

 サッカー経験者ならば分かるが、予告して股を抜くは相当難しい。当たり前のことだが股を閉じれば、股抜きはできないのだ。

 ところが――。

 ロナウドは、様々な技を使い、その男の股を開けさせて宣言通り五度抜いた。「あんな奴は見たことがない。まさに怪物だった」とオリベイラは首を振った。

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