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栗原勇蔵インタビュー 横浜純情伝~ハマの兄貴が語る「横浜魂」~

text by 藤井雅彦 photo by Kenzaburo Matsuoka

F・マリノスは日本有数のビッグクラブ

――それでもチーム一筋12年目のシーズンを戦っている。率直にどんな心境?

「同じチームに長くいると言っても、社長によって経営方針が変わって、選手は毎年のように入れ替わっているし、監督はさっきも言ったように8人いた。これは移籍して違うクラブを渡り歩いているのとそんなに変わらないんじゃないか(苦笑)。Jリーグが開幕した頃、それとオレが加入した頃、それと今とでは、サポーターだって人が入れ替わっている部分があると思う。クラブハウスだって東戸塚からみなとみらいに移転した。変わらないのはスタジアムくらいかな? あとは横浜にあるということだけ。当たり前か(笑)」

――あまり同じチームにいるという感覚はない?

「いろいろあったけど、オレはもちろんF・マリノスのことが好き。サッカーに関しては監督によっていろいろな考え方があると思うけど、クラブには自分が若い頃から可愛がってもらっていると感じる。だから違うクラブからオファーをもらっても、ずっとこのクラブにいる。そういう意味では、周りの選手が移籍するときも『なんで簡単に移籍してしまうのかな』って思う。逆にクラブがあっさりと手放してしまうのも、なんでそういう対応をするんだろう、と。オレよりもいい選手はいっぱいいたと思う。本当のことはその場にいないとわからないし、どう捉えるかは本人次第だけどね。オレと同じように扱われても、そう感じない人もいるだろうから」

――引退後はフロント入りを希望する?

「いやいや(笑)。そんなことまで考えていないよ。その仕事がどれだけ大変なのか分かっているつもりだから。それに、もし監督なり強化部になると、結果が出なかったときに責任を取ってクラブを離れないといけない。プロの世界だからね。ただ、寂しいよね。理由はどうあれ、好きなクラブを離れたくないから。そこはJリーグ全体として組織体制が完璧に整っていないところかなと思う。

 何十年後かに、さっき話した状況でもうまく回っていくような組織になっているかもしれない。オレが50歳や60歳になる頃かな。どのクラブでもそうだけど、フロントにJリーグでプレーした経験のない人が多いのが現状で、最近になってようやくJリーグを経験した人がフロントや監督に出てきた。クラブの職員全員がJリーグ経験者になる必要はないだろうけど、Jリーグを経験した人間が多くなればクラブとして変わっていくきっかけになるかもしれない」

――F・マリノスは日本有数のビッグクラブだと思う?

「日本ではもちろんそうだと思う。もともと日産自動車サッカー部だったというのもあるし、これまでに積み重ねてきた優勝回数もある。あとは規模や練習場、それになんといっても場所がいい。単純にホームタウンの人口が多いというのもあるけどね」

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