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サッカー本の「診察室」を開いた理由。『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』佐山一郎氏インタビュー(その2)

このほど『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』(カンゼン)を上梓した佐山一郎氏。153冊ものサッカー本を紹介する書評集だが、どのような思いで本と向き合ってきたのか。宇都宮徹壱氏が徹マガで話を聞いた。

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

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版元の自転車操業プラス本屋さんの新書の棚が増えた

──本を読むことが、時に苦痛に感じることってありません?

サッカー本の「診察室」を開いた理由。『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』佐山一郎氏インタビュー(その2)
佐山一郎氏【写真:宇都宮徹壱】

佐山 やっぱり書くこととは明らかに違う過呼吸な感じ。と同時に、確かな栄養になっていく実感はあります。読書力っていうのは、年齢を取ってからでも養えると思う。かえって目にいいっていう学説も出て来てますしね。

 ただ、本当にみんな本を読まなくなったっていうのはあるんですよ。PCやスマートフォンなんかでメディア環境が変わって、老眼が早く来るようになったのも一因なんじゃないですか。

──私も最近は老眼が入ってきましたね。細かい脚注が厳しくなってきて(苦笑)

佐山 それは早いね! ただ、この本は若干文字を大きめにしていますよ。

──その昔『ライターになる!』(CWCレクチャーブックス)という実践マニュアル本の中で、佐山さんが「ブックライターをめざしなさい」とおっしゃっていて、フリーになりたての頃はその言葉を肝に銘じながらデビュー作に取り組んできました。

 今から15年以上前の話ですが、当時は今以上に書き手がすぐに書籍を出しにくい状況があったと思います。ましてやサッカー関連本なんて、非常に難しかったというのが実感です

佐山 版元の自転車操業プラス本屋さんの新書の棚が増えたというのもあるよね。新書って、昔は学者先生がちょちょいと書くような感じで、メジャー紙は書評欄で取り上げるのを嫌がっていたんですよ。

 スポーツ本の新書は自分がお願いして初めて取り上げてもらえたんじゃないですかね。もちろんハードカバーのほうがいいとは思うんです。いい加減な気持ちで出してしまうと、いつまでも証拠が残っちゃうよっていう点では同じことなんですけどね。

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