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サッカー本の「診察室」を開いた理由。『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』佐山一郎氏インタビュー(その2)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

カルーセル麻紀を歌う佐山一郎

──そういう境地に達すると、本の見方というものも一般消費者とはかなり違ってくるように思うのですが、いかがでしょうか?

佐山 なんかね、気がつくと出版の世界で長くなっていたので、雑誌なんかでも後ろから読んだりするんですよね。雑誌の後ろの方を見て、手を抜いていないかどうか見るんですよね。

──編集者が、ですか?

佐山 そう。ちょっと大げさに言えば、どんな時でも出版人である自分を忘れるべきではないと思うんです。明日が世界の終わりであっても、本を作ったり読んだりというね。根性論とかじゃないけど、読んでもらいたいとか、届けたいとかの強い意志。

 孤立無援に近い自分ひとりの価値観で、世界を変えてみせるゾという気概みたいなもの。そんな熱い思いがあっても伝わらない厳しい時代だからこそ、もしそれが成就できれば人一倍幸せなことだと思うわけですよ。

──なるほど。そんな佐山さんご自身は、最初から物書きのお仕事を志していたんでしょうか?

佐山 いや、実は他のこともやっていたんです。十代から音楽をやっていて、フォーク、ロック、ハードロックって進化していったんですよ。ジャズは聴くだけでやるほどのテクはなかった。

 いちおう、ヤマハの賞取ったり、グループでレコード1枚出したりはしてるんです。東宝レコードの同期に草刈正雄さん、あとカルーセル麻紀さんなんて人もいます(笑)。

──カルーセル麻紀も歌っていたんですか?

佐山 歌っていましたね。そんなことを1972年から73年ぐらいまではやっていて、20歳で見切りをつけたんですよ。それからは、音楽、ファッション、インタビューと、もっぱら書いたり編集したりする方に。作業としては地味だけど、飽きずに死ぬまでやれる仕事だなとは当初から思っていました。

【その3へ続く】

提供:徹マガ(佐山一郎氏へのインタビュー以外は次号170号に掲載されます)

サッカー本の「診察室」を開いた理由。『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』佐山一郎氏インタビュー(その1)

『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』
定価1995円

史上初の サッカー本書評集!
【目次】
第1部 球を捨てよ、本屋さんへ行こう
第2部 02年 から06年まで
第3部 オシムの時代から10年まで
第4部 サッカー版「ぼくの採点表」全88冊 2012~2013
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