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FIFAもようやく重い腰を上げ…。カタール、W杯買収劇の裏側。誰に、いくらで票を買ったのか?

text by 田村修一 photo by Getty Images

カタールへの投票呼びかけ。国家間の経済的結びつき影響

 また、長くその座を独占し、サッカー利権の甘い汁を吸い尽くしてきた南米の3人の理事たちは、カタールからも例外なく“汁”を受け取っていた。

 しかし「カタールゲート」以降、自国のメディアから追及の手があがり、その矛先をかわすために、権勢をほしいままにしたニコラス・レオス(パラグアイ)はすでに南米連盟の終身会長とFIFA理事を辞任し、大統領以上の力を持つと言われたフリオ・グロンドーナ(アルゼンチン)も、今期限りで協会会長を退くと宣言している。

 そしてジョアン・アベランジェ前会長の娘婿であった(現在は離婚)リカルド・テシェイラ(前ブラジル協会会長)は、ISL(電通とアディダスの共同出資によるマーケティング会社。01年に破産)から1220万ユーロ(約17億800万円)に及ぶ不正資金取得を疑われたが、司法の追及を逃れた。

 そして、バルセロナ会長(当時)のサンドロ・ロセイが経営する会社と共謀し、ブラジル代表戦契約料の不正着服など他に多くの闇を抱えたまま(カタールはそのごく一部)、五輪組織委員長を含むすべての役職を突如辞任してマイアミに逃亡した。ケイマン島経由で資産のすべてをアンドラに移した彼は、現在、同国の市民権を要求しているという。

FIFAもようやく重い腰を上げ…。カタール、W杯買収劇の裏側。誰に、いくらで票を買ったのか?
ブラッターFIFA会長【写真:Getty Images】

「これがカタールゲート効果だ」と、FF誌でこのテーマを一貫して担当するエリック・シャンペルは言う。「いろいろなことがオープンになり、世界が動き出した。マイケル・ガルシア(FIFA倫理委員会調査局長)による調査も本格的に始まった。最終的なレポートの完成は今年末か来年初頭になるだろうが、そのときにはすべてが明らかになるだろう」

 ゼップ・ブラッターFIFA会長の言葉にも変化が見られた。9月19日、ディ・ツァイト紙に掲載されたインタビューで、「ヨーロッパの国々でも国家の長の直接的な影響力が存在」したことを認めたのだった。

「彼らは投票権を持つ自国の理事に、カタールに投票するようにアドバイスを送った。なぜならカタールとの間に、経済的な強い結びつきがあるからだ。我々は大きな間違いを犯したかもしれない」

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