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新システム挑戦中のINACを粉砕したベレーザの若き才能。ハメス・ロドリゲスを手本にする左利きの高校3年生

リーグ優勝12回を誇る日本女子サッカー界の名門、日テレ・ベレーザ。対するは無敵の強さでリーグ3連覇を達成した女王INAC神戸レオネッサ。なでしこリーグの盟主はどちらか、真夏の西が丘で両者が激突した。

text by 青木務 photo by ジュニアサッカーを応援しよう!編集部

新システムの熟成にまだ時間が必要なINAC

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澤穂希【写真:ジュニアサッカーを応援しよう!編集部】

 前半は互角の展開だった。試合開始早々になでしこジャパン・FW髙瀬愛実が決定機を迎えると、負けじとヤングなでしこのFW田中美南がGK強襲のシュートを放つなど、両者に見せ場が訪れた。

 今シーズン途中にシステムを3-4-3に変更したINACだったが、「まだ混乱する部分はある」と澤穂希が言うように、熟成にはまだまだ時間がかかりそうだ。この日は相手のパスワークに翻弄され、ボールの奪いどころも定まらない。澤も要所では持ち前の危機察知能力でインターセプトを見せたが、チーム全体として後手を踏む場面が多かった。

 前半こそ素早いリトリートでブロックを作っていたが、後半に入るとベレーザがINACの守備陣形の隙間を巧みに突いた。

「最終ラインが3枚ということでスペースを突かれる場面は増える。前からのディフェンスや中盤のバランスをうまく取れないと、相手のペースになってしまう」と澤は試合後に話したが、ベレーザの流れるようなボール回しを止められなかった。

 元ベレーザの選手でもある澤にとって、相手の特徴はよくわかっている。そしてそれは、今のINACにはないものでもあった。

「ベレーザは相手の嫌なところを突いてくる。ワンタッチで前に繋げるパスが正確で、みんなが連動できているのがベレーザの強みだと思いますし、今の自分たちにはないかな」

 後半19分にベレーザが1点を先制すると、2点目は将来を嘱望される若い才能が叩き込む。高校3年生の籾木結花がバイタルエリア付近でボールを受けると、自ら持ち込み得意の左足を振り抜く。なでしこジャパンのGK海堀あゆみが懸命に腕を伸ばすも届かず、鋭く放たれたボールはネットに突き刺さった。

 打った瞬間に入ったと確信するというのはよく聞くが、籾木は中央右寄りでパスを受けた時点で予感した。

「ボールを持った瞬間に自分の形だなと思いました。中に切れ込んでシュートだと」

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