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悔し涙もすべて自分の糧に。浦和レッズを牽引、成長を続ける猶本光の存在感

text by 馬見新拓郎 photo by Getty Images

U-20女子W杯を逃した悔しさ

 吉田監督は今季の開幕前から猶本を中心選手に据え、また猶本自身もその期待に応え続けた。特筆すべきは、90分を通してプレーの質が落ちないことである。猶本にはいわゆる『消える時間』がない。

 試合終了間際のカウンターでも、猶本は多くそれに関わり、元々持ち合わせていた周囲の状況把握能力と、ショートパスの正確性に加え、ミドルレンジのパスやシュートも精度が高まった。

ただ、攻守の経由地としてボールを捌くだけのボランチではなく、今季はフィニッシャーになれる脅威を伴ったボランチへと成長。また、ボールを受ける直前の身体の傾きだけで、近くの相手選手を置き去りにするフェイントにも磨きがかかってきた。こういった小技を90分の中に散りばめることで、常に自分が有利な状況を作り出し、ムラのないパフォーマンスを達成することができた。

 吉田監督は「猶本は昨季、U-19日本女子代表(ヤングなでしこ)に行って自信を失っていたが、元々は力のある選手。自分の力に自信を持ってピッチに出ればこれからも信頼できる選手」と評する。

 昨年10月に行われたU-19アジア女子選手権(中国・南京)で、猶本は主将を務めながらもヤングなでしこは4位となり、今年のU-20女子W杯(カナダ)への出場権を逃した。もし3位以内に入っていれば、猶本はおそらく浦和を離れ、今年の8月24日まで行われたU-20女子W杯(カナダ)に参加していたはずだった。

昨年のU-19アジア女子選手権では勝てない試合ごとに涙を見せていたが、その出来事を最近の猶本は少しずつポジティブに捉えられているようだ。

「U-20女子W杯に出られなかった分、今季は最後まで優勝の可能性を残したなでしこリーグを戦い続けられた。世界大会を逃した、その意味を見出せるように過ごしてきたつもりだし、世界大会に出られなかったことも意味があったのかなと考えてもいる」

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