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【佐山一郎×後藤勝 “サッカー狂”特別対談】フットボール・ライティングの地平線 第2回「原稿を方程式に流し込むような機械的な作業をしている記者」

text by 後藤勝 photo by editorial staff

社畜的な文化に支えられてきたサッカー本

【佐山一郎×後藤勝 “サッカー狂”特別対談】フットボール・ライティングの地平線 第2回「原稿を方程式に流し込むような機械的な作業をしている記者」
『今村淳1953-1998 追悼集』(発行者:今村淳を偲ぶ会)※非売品

後藤 『サヤマ・ペーパーバックス』は統一ロゴが図案化された佐山さんのお顔で、カバーは押し出しが強いですね。ロックですね。

佐山 ロックバンドを10代の終わりぐらいまではやっていましたしね。見た目は一学年上の坂本龍一さん、心は3歳年下の桑田佳祐という路線がいいのかも(笑)。

後藤 最低部数数千部というサッカー本をしこしこと出してくれる出版社もめっきり少なくなってきました。

佐山 やはり(ワールドカップで)負けたのが痛かったね。あれでムードがどんどん悪くなった。国際舞台で負けることの甚大さの自覚がサッカー協会にはあまりないんじゃないかな。

後藤 まあ、サッカー本は、サッカー好きが必ず一定数買ってくれるだろうという思い込みのもとに企画が成り立っているんですけどね。

佐山 今はまだ、サッカー本の企画を立てるのが好きな担当者が決裁できるポジションにいるからね。そろそろ無理解ゆえにお任せするしかなかった上司も引退していなくなるだろうし。

後藤 ゆえに、その担当者がいなくなると、サッカー本が出なくなるということもある。

佐山 上も下も社畜的だからね。だからこそたったひとりの力が大切なんですよ。今日は、土産代わりに編集委員をつとめたこの本を持ってきたんです(『今村淳1953-1998 追悼集』非売品/上製本、限定五〇〇部、発行者:今村淳を偲ぶ会)。知られていないと思うけど、彼がいたことである時期までの日本のノンフィクションはなんとかなっていたんです(『文藝春秋』『週刊文春』『Sports Graphic Number』『文春文庫』などの名編集者)。こういうスーパーな人間がひとりいれば、まだなんとかなる。ただし、出会えるかどうかの問題もまた才能と運によるね。

後藤 拝読します。佐山さんは死ぬまで書き手を続けようと思っているんですか?

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